⚠️胸糞注意⚠️
美咲side
私は、人間が嫌いだ。
優しいふりをするから。
助ける気もないくせに、「大丈夫?」って言うから。
見て見ぬふりをするくせに、後から“かわいそう”とか言うから。
……でも。
一番嫌いなのは、多分。
今でも、お母さんに「助けて」って思ってしまう自分だ。
お母さんは、昔から人に興味がない人だった。
別に暴力的でもない。
怒鳴るタイプでもない。
ただ、“どうでもよさそう”だった。
私にも。
家にも。
多分、自分自身にも。
それだけ言って部屋に戻る。
昔からそんな感じ。
でも、小さい頃の私はそれだけで嬉しかった。
話しかけてもらえるだけで嬉しかったし、たまにコンビニスイーツを買ってきてくれるだけで「お母さん優しい!」って思ってた。
だから、嫌われたくなかった。
静かにして。
怒らせないようにして。
“面倒な子”にならないようにしてた。
でも、中学生の時。
全部壊れた。
その日、家に帰ると知らない男がいた。
ソファに座っていた男が、ゆっくりこっちを見る。
お酒の匂い。
ベタベタした笑い方。
その瞬間嫌な予感がした。
男は勝手にそう言った。
聞いてない。
でも、お母さんなら別に言わなくても不思議じゃなかった。
男が立ち上がる。
近づいてくる。
本能で分かった。
逃げなきゃって。
でも、腕を掴まれた。
酒臭い息。
撫でてくる手。
目線が怖くて、全身が凍った。
気持ち悪い。
怖い。
でも声が出ない。
その時、玄関が開いた。
助かった。
本気でそう思った。
涙が出そうになるくらい安心して、お母さんの方へ行こうとした。
でも。
怒られたのは、私だった。
頭が真っ白になる。
お母さんは、冷めた顔でそう言った。
男は後ろで笑ってる。
その瞬間。
あぁ、って思った。
助けてくれないんだ。
お母さんは。
私より、この人を選ぶんだ。
それから、お母さんは家に帰らない日が増えた。
男は当然みたいに家にいた。
最初は肩を触るだけだった。
でも、だんだん距離が近くなった。
そう言いながら触ってくる。
後ろを通る時、距離感がおかしい。
ソファに座ってると隣に来る。
逃げると笑う。
ある日、リビングで寝落ちしてしまった時。
目を覚ましたら、その男の顔が近くにあった。
頭が真っ白になった。
飛び起きると、男はヘラヘラ笑ってた。
怖かった。
気持ち悪かった。
でも。
お母さんは、その隣でスマホを見ていた。
全部見えてるはずなのに。
何も言わなかった。
その時、本当に分かった。
私は、この家で守られないんだって。
学校では普通にしていた。
笑って。
空気読んで。
友達と騒いで。
そうしてる時だけ、“普通の高校生”になれた気がした。
気づけば私は、クラスの中心にいた。
別に自覚はなかった。
でも、私が笑えば周りも笑うし、私が誰かを嫌えば周りもなんとなく距離を置いた。
放課後も自然と人が集まった。
それが普通だった。
……だから。
あなたが気に入らなかった。
あなたのお母さんは、ちゃんとあなたを見ていたから。
授業参観も。
三者面談も。
体育祭も。
ちゃんと名前を呼んで、ちゃんと笑ってた。
それを見るたび、胸がぐちゃぐちゃになった。
なんで?
なんであいつは普通に愛されてるの?
私は、“助けて”すら無視されたのに。
だからいじめた。
最初は軽い悪口。
私が言えば、周りも笑った。
それが安心だった。
“私は嫌われてない”って思えたから。
あなたを下にしてる時だけ、自分が少しマシな人間になれた。
そんな時。
吉田仁人が転校してきた。
クラスが一気に騒がしくなった。
女子達が騒ぐ。
その時まだ佐野勇斗はいなかった。
芸能活動が忙しくて、学校に来れてなかったから。
だから最初、クラスの中心になったのは仁人だった。
私も目で追った。
もっと話したいって思った。
でも。
仁人が見ていたのは、あなただった。
あなたの前でだけ、少し楽しそうに笑う。
その顔を見るたび、胸が痛くなる。
なんであなたなの?
私の方が先に好きだったのに。
停学になって学校へ戻った日。
クラスの空気は変わっていた。
前まで私の周りにいた子達が、今度はあなたの周りにいた。
その輪の中に、久しぶりに登校した佐野勇斗がいた。
明るく笑ってる。
その隣で、仁人も少し笑ってる。
あなたも笑ってる。
楽しそうだった。
その光景を見た瞬間。
初めて分かった。
……あぁ。
私、もう。
誰にも必要とされてないんだ。
第10話!!
今回は美咲ちゃん目線です!
今回は胸糞回です!
停学から帰ってきた美咲ちゃんとどうなるのでしょう……
♡と☆とコメント待ってます!












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。