放課後。
先生に頼まれたプリントを職員室へ届けて、私は一人で廊下を歩いていた。
窓の外は夕焼けで赤く染まっている。
運動部の生徒たちの声も遠くて、校舎は少し静かだった。
無意識に名前が出る。
最近、放課後一緒に帰るのが当たり前になりすぎていた。
その時。
階段の踊り場から、女の子の声が聞こえた。
足が止まる。
嫌でも分かった。
相手は仁人だ。
そっと踊り場を見る。
顔を真っ赤にした可愛い女の子と、その前に立つ仁人。
夕陽が差し込んで、無駄に絵になる。
……ほんと腹立つ。
……って!!そんなこと言ってる場合じゃない!!!
仁人が告白されてる!!!???
仁人は黙ったまま聞いていた。
でも、その顔は少し困っていた。
少し沈黙が落ちる。
なんとなく、その場から動けなかった
あの子、ダンス部の可愛い子だ
OKするのかな……
仁人がぽつりと繰り返した
危ない
危うく咳き込みそうになった。
なにそれ。
女の子も固まってる。
仁人は本気で分からなそうな顔をしていた。
女子の子、完全に困ってる。
そりゃそう。
告白の返事で哲学始めるやついる?
耐えられなくなったその子は走って行ってしまった。
仁人は去っていく背中を見ながら、小さく首を傾げていた。
……いやお前が追い詰めたんだよ。
慌てて壁の影に隠れる。
危な。
今見てたのバレたら死ぬ。
すると
心臓止まった。
え、待って。
バレた!?
思わず変な声出た。
やばい。
完全に不審者。
ひょこ、と顔を出す。
仁人が普通にこっち見てた。
終わった
恥ずかしすぎる
仁人が少し笑った
なんか悔しい
帰り道。
校門を出て、二人で並んで歩く。
夕焼けで空が赤い。
真面目な顔。
絶対今も本気で考えてる。
少し考える
言いながら、自分で少し苦しくなる。
だってほとんど私の気持ちのことだった。
仁人は静かに聞いていた。
ぽつりと呟く。
仁人がこっちを見る。
最後だけ少し声が弱くなる。
期待してるみたいで嫌だった。
仁人は少し考える。
その答えに、胸が少し痛くなる。
分かってた。
この人は天使で、私とは違う。
なのに最近、一緒にいるのが当たり前になりすぎてた。
放課後一緒に帰って。
夜、部屋に来て。
くだらない話して笑って。
たまに優しくて。
……期待しない方が無理だった。
心臓が跳ねる
苦しい。
嬉しい。
でも、その瞬間。
ふっと頭に浮かんだ。
……ああ。
そっか。
仁人、人間とまともに関わったことないんだっけ。
初めてなんだ。
毎日話して。
一緒に帰って。
こんなに近くにいる人間。
だからきっと。
これは恋じゃない。
ただ、“初めて”だから。
初めて触れた人間だから。
依存みたいになってるだけ。
そう思った瞬間、胸の奥が少し冷える。
結局、特別なのは“私”じゃなくて。
“初めての人間”。
私は誤魔化すみたいに笑った。
少し沈黙が落ちる。
風が吹いて、髪が揺れた。
仁人は少し黙ったあと、ぽん、と軽くあなたの頭に触れた。
思わず少し笑う。
仁人も小さく笑った。
その顔を見た瞬間、また心臓が痛くなる。
優しくしないでほしい。
期待してしまうから
夕焼けが滲んで見える。
隣にいるのに、少し遠い。
でも。
それでも隣にいたいって思ってしまう。
期待して、傷ついて、それでも好きで。
そんな自分が、一番厄介だった。
8話ありがとうごさいます!!
悲しい感じになっちゃいました🥺
でもきっとハッピーになるはず……!!
♡と☆とコメント待ってます!!












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。