あの言葉が。
頭から離れない。
ベッドに顔を埋めて暴れる。
無理。
無理無理無理。
なんであんなタイミングで言うの!?
しかもあんな自然に!?
勢いよく起き上がる。
落ち着け。
冷静になれ、あなたのニックネーム。
相手は誰?
佐野勇斗。
今をときめく超人気俳優。
ドラマ出て。
映画出て。
雑誌出て。
テレビでもキラキラしてる人。
そんな人が。
私なんかを好きになる訳がない。
即終了。
解散。
はいこの話終わり。
絶対違う。
ていうか芸能界って、可愛い人だらけじゃん。
モデル。
女優。
アイドル。
顔ちっちゃくて、スタイル良くて、オーラやばい人いっぱい居るじゃん。
意味わからん。
おかしい。
計算式ミスってる。
しかも勇斗って、人との距離感近い。
優しいし。
気遣いできるし。
だからきっとあれも、ノリ。
軽い感じ。
社交辞令。
芸能人特有のやつ。
自分で言って気づいた。
重。
普通に重。
また布団にダイブ。
でも。
頭の中に浮かぶ。
夕日。
下駄箱。
少し照れたみたいに笑う勇斗。
枕に顔を埋める。
無理無理無理。
恥ずかしい!!
ていうかなんで聞こえてないふりしたの私!?
いや、でも仕方なくない!?
あんなの真正面から受け止められる人いる!?
終わってる。
聞き返し方終わってる。
しかも勇斗、一瞬めっちゃ固まってたし。
絶対変なやつだと思われた。
でも。
もし。
もしあれが本当に、“好き”だったら?
即否定。
ありえない。
そんな訳ない。
なのになんで、こんなドキドキしてるんだろう。
私は仁人が好きなんだ。
なのに。
勇斗の言葉を思い出すたび、胸がざわつく。
翌日。
昼休み。
私は机に突っ伏していた。
今日勇斗は居ない。
多分TVなどの収録だろう。
少しだけほっとした。
だって今会ったらどんな対応すればいいのか分からないんだもん。
数秒沈黙。
食い気味。
危な。
やばい。
聞き方ミスった。
鋭い。
こわ。
すると。
いろはが急に真顔になった。
思った以上に弱々しい声が出た。
その瞬間。
胸が少しざわついた。
──羨ましい。
昔も聞いたことがある。
最初はそんな言葉だった。
少しずつ距離ができて。
少しずつ空気が変わって。
最後には。
友達じゃなくなった。
だから。
ほんの少しだけ。
怖くなる。
またそうなるのかなって。
でも。
いろはは次の瞬間。
ばんっ、と机を叩いた。
笑いが起こる。
なんなんだろう。
この人。
嫉妬してる。
羨ましいとも言う。
でも。
それ以上に。
私を認めている。
感情を隠さない。
遠回しにも言わない。
全部そのままぶつけてくる。
真っ直ぐすぎる。
眩しいくらい。
そして少しだけ。
圧倒される。
咲希がそんな私を見ながら聞いた。
止まる。
どう思った。
嬉しかった。
びっくりした。
信じられなかった。
でも。
少しだけ。
本当だったらいいなって。
そこまで考えた瞬間──────
後ろを振り返る。
仁人だった。
立ち上がる。
すると仁人が私を見る。
髪を触られる。
なんでそんな平然としてるの。
心臓うるさいんだけど。
私はそのまま職員室へ向かった。
咲希side
あなたが教室を出てく。
ふと首を傾げた。
沈黙。
数秒後。
いろはが顔を上げた。
いろはが頭を抱える。
私は小さく笑った。
そして職員室へ向かったあなたの背中を思い浮かべる。
本人はきっと。
何も分かっていない。
吉田くんのことも。
佐野くんのことも。
自分自身のことも。
小さく肩をすくめた。
あなた。
多分全然気づいてないけど。
思ってるより、かなり大変なことになってるよ。汗
読んでくださりありがとうございました!
今回はあなたちゃんの「聞こえてたのに聞こえなかったふり」を中心に、佐野くんの言葉に振り回される回でした。🫨💘
そして個人的に好きなのは、やっぱりいろはちゃん!!
羨ましいし嫉妬もする。でもそれ以上にあなたちゃんを認めている。そんな真っ直ぐさが少しでも伝わっていたら嬉しいです。😊🫶
そして咲希ちゃんの言う通り――
あなたちゃんが思っているより、事態はかなり大変なことになっています。笑
次回も楽しみにしてて下さい!!!












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。