シャワーを浴びて身体はさっぱりしたのに、心は穏やかではなくなった。
これは早く訪問を済ましてしまおうと早速本題に入った。
してるよ、してる。毎日死ぬほど働いてる。だから、私を早く解放して。
間髪いれずに突っ込んできた彼にそういうと、いい大人がだらしないなと言われてしまう。
いいじゃないか!大人だってサボりたいときがあるんだよ!
はい???????
え、暴走族って暴走族ですか???
え、まってまってそれって不良じゃん。
いや、こめかみに龍の入れ墨入れちゃうあたりで普通じゃないけどさ、
喧嘩とかもめっちゃやりまくってたけどさ、暴走族ってもうそれあれじゃん。
喧嘩が日常じゃん。只でさえ他の担当してる子もヤバくて、対応に追われてるのに君までそうなるの?
考え直してよ、あなたをこれ以上苛めないでよ。
もう俺、名が知れ渡ってるし。
誇らしげに言った彼に鉄拳を落としたのは仕方のないことだと目を積むって欲しい。
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(それにしても東京卍會なんて聞いたことないけど、一体いつできたのだろうか?)
私はデスクで報告書を作成しながら考えたが、全く聞いたこともない名前だった。
ドラケンを訪問したのはちょうど一ヶ月前だから、それから今日までの間にできたのだろうけど、全く耳に入ってきていない。
なぜ?
いや、まあ、担当の子が中心人物じゃないからいっか。問題はなし。ドラケンはもう知らん。
担当を変えてもらおう。もう私の手には負えん!別に何かやったとかじゃないけど。
もうここで働くのは嫌なんだよ!部長の機嫌を損ねたらクビにるのなら喜んでやりますとも!!!
(………うわ、ドラケンが入ったところじゃん)
白々しく答える伊藤に部長は汗をかく。
目の前の彼女はどれだけ厄介事を任されるのが嫌いなのだろうか。
(100人か、それはすごいな。感心感心。)
一昨日?……一昨日って何してたっけ?
あ、そうだ。六本木の双子の家庭訪問に行ったんだった。夕飯作れって脅されて作ったのはいいけど、なんか薬盛られて命からがら逃げてきたのだ。
昨日は盛られた薬がかなり強めの睡眠薬だったのか、ずっと眠気に襲われてたから無理やり有給を取って休んだの忘れてたわ。
テレビや新聞も見る程なかったから情報なんて入ってこなかったし。
………それより、
何やってくれとんじゃい、あの黒川イザナは。
楽しそうに人を殴っている黒龍の総長の顔を思い出して、頭の中で握りつぶした。
" お前、東京卍會の総長の佐野万次郎の担当よろしくな "
今、なんと?
私の言葉にオフィス内にブリザードが吹き荒れる。
私の言葉にその場にいる全員が首を思いっきり横に振った。
大丈夫ですよ、彼、根はいい子ですから
大丈夫ですよ、彼大分丸くなりましたから
あはは、私にも無理です。でもうまいご飯を食べさせておけば大人しいですよ
感情表現あべこべなだから慣れれば平気ですよ
薬に耐性があればいけますって。おもちゃにされるだけで死にはしませんから
ええ、何してるん、隆くんよ。
優しい君まで私を困らせる側に回るのかい?泣いちゃうよ?
じゃあ、私が死んでもいいいってことですか?
部長は私の返答を最後まで聞かずに頼むなと言い残して去ってしまった。
おい、こら、待ちやがれ。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。