大学を卒業してすぐに児童相談所で働き初めて3年目なるが、上司に無理矢理仕事を押し付けられたり、一筋縄ではいかない家庭、子供に振り回されながら頑張っている。
児童相談所は基本"何でも屋"で、児童や家庭に纏わることはなんでも相談を受ける。
毎日毎日訪問に出掛けて、訴えを聞いて、報告書を作成して、提出する。対応する子が問題を起こせば、その対応に当たる。
正直、ブラックもいいところだが、なぜか私は辞めずに今も頑張って働いている。
───なんでだろ、本当は、今すぐやめたいのにな。
空を見上げればジリジリと照りつける真夏の太陽。東京の夏ってしんどい。嫌い。
上はポロシャツだけど下はスーツ。真夏にスーツってキツい。しかも、渋谷のど真ん中にいるというなんとも過酷的な状況。
(住んでるところは異常だけど、本人はめちゃめちゃしっかりものだし……)
彼が住んでいる風俗店に繋がるエレベーターに入りながらそんなことを考える。
新人の時、初めての担当は彼だった。
初回訪問でここの店長にそう言われて、特に何の疑問もなく、あ、そうですか……と納得した。
そのまま仕事場に戻ったら、めちゃめちゃ怒られた。教育に悪いから、一時保護してこいと。
当時の私はその上司の言葉が理解できなかった。
だって、彼が住んでいるところは本当に、ちょっと、いや、かなり常識から外れていたが、とてもまともに育っていた。
本人にもここでいいと言われてしまえば保護する理由もない。
私は上司の意見に逆らって彼を保護せず、こうやってずっと家庭訪問というか風俗訪問を続けて彼の動向をチェックしているのだが……
ウィーンとエレベーターの扉が開いた途端私は頭を抱えた。
何で、そこにいるのかな?
そうね!願わくばこれが幻覚だと思いたいよ!
だから、なんでいないんですか!?店長!
ガンッ!とフロントの机に頭を思いっきりぶつけた。
一息で言うも、彼はケラケラと笑っている。
おい、こっちは真剣なんやぞ?
クズならクズだと言われても構わん。仕事を増やされるのは嫌なのだ。
訪問に来るのもしんどいのだから頼むよ……
急にマジになったドラケンに頭を抱えながら返答するとプハッと吹き出した。
え、なんで笑うの?こっちはマジで勘弁なんだけど。
汗でびっしょりと濡れた服が気持ち悪いんだよ!
ドラケンからタオルを受け取り、いつものように奥のシャワー室に入った。
そのあと、私がいると分かって入ってきたオネーサマに胸を揉まれて追い出したのだが、いつものことだとフロントのドラケンは鮮やかに無視したのだった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。