あの日の事を思い出す。
ツキンと心に痛みがはしった。
柔らかそうな茶色がかった髪の毛。
あ、でも、柔らかそうな…じゃなくて、柔らかい、かな。
角度によって翡翠色に見える瞳。
広い肩幅。
桜がふわりと舞った。
淡い桃色が視界を染めて胸がぎゅっと締め付けられた。
刀が鞘を抜けるときの微かな音が聞こえたような気がして。
フッとうしろをむいた。
(いるわけ、ないけど)
でも、あの木の下には貴方がいる。
あなたさんと言って私に笑いかけてくれた貴方。
すごく、長かった。
いままで、すごく。
逢いたいと望む日々。
逢えないと分かっているから死にゆく心。
どんどん、崩れて
消え失せていって。
でも、もうすぐ逢える。
穏やかな気持ちで、貴方にあえる。
「⿴⿻⿸」
愛している、貴方に。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。