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2019/08/25

第1話

Ep.00【おわれない】
 薄暗い森の中、木が倒され1箇所だけ真上が葉に遮られておらず、光が差しているところに照らされていたのは1人の男。
彼は背が高いが細身で、耳が長く、頭には角が生えている。さらには右手には鉤爪のようなものが見えた。左手には本を1冊。

男は切株に腰をかけて言った。





???
…おはよう、今日で539日だよ。
毎日数えるのは大変だ、日の動きを見てないといけないから。
???
俺がこの本を読むのは何回目だったかな。
お前にはまだ読んでなかったと思って。


足を組んで本を開こうとしたその手を止めて男はこう言った。




???
最近、食べてないんだ。
それに夜寝ようとしてもなかなか寝れないし。
……日を数えるのは短くて大変だけど夜が長く感じる。
???
……なあ、どうしたら良い?




少し震えた声で誰かに尋ねる。




???
俺はどうしたら良かったんだ?




その頬には涙が伝っていた。
つう、と頬を伝い陽の光に反射して輝き、やがて落ち、涙としての存在を無くし、輝きを失う。




???
お前を失ってもあのしきたりは続いてる…失ったことしかないんだよ。



風が彼の三つ編みを揺らした。
ぬるく、弱い風だった。



???
………………紅茶を、淹れてくる。
男は立ち上がって本を切株の上に置き、薄暗い森の中に戻ろうとした。
しかし足を止めてくるっと元の方向を向き直し、ポケットから何かを取り出した。

???
…最初にこれを渡そうと思っていたんだったがすっかり忘れていた。
???
萎れてしまったな……情けない、俺がこの話をせず最初に渡せば萎れることもなかったかも知れないのに。



取り出したのは小さな花だった。
ポケットに入れてさらに時間が少し経っていたため萎れているが、綺麗な黄色の花だった。



???
たまたま、家の近くで咲いていたんだ。珍しいだろう?なかなかこんなところで花なんて咲かないし。



彼はその花を置き、また薄暗い森の中に入っていった。
その表情は、優しいものに変わっていた。



墓石に置かれた1輪の黄色の花はぬるく、弱い風に揺らされていた。