ピンポーン
俺はその場にしゃがみこんで目をつぶった。
…………
どのくらいたったかな。
足痺れてきた。
痺れた足を伸ばしていると、
前から懐かしい声が聞こえた。
碧優は笑っていた。
俺は真っ直ぐに碧優を見つめた。
そう言うと碧優はキョトンとしていた。
すると碧優は少し俯いて困ったような顔をした。
碧優がびっくりしたように俺を見つめた。
そういった途端、碧優の顔が真っ赤になった。
碧優か顔をくしゃっとして笑顔を見せた。
もうあの頃には戻れない。
いや、戻らない。
大事な過去として君を忘れることは無いから。
'好き'じゃない。
'好きだった'んだ。
そんな2人の間には、
とても穏やかな風が流れていたんだ。
俺は後ろを向いた。
背中から碧優の声。
手を振って2人は別れた。
別れたあとの俺は、とても穏やかで。
なにか引っかかってたものが取れたかのように。
頭の中は……はにでいっぱいだったんだ。
歩きながら1人で笑ってしまう。
気づけばもう季節は変わっていて、
寒くなってきた季節は…冬。
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編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!