第27話

洗車
921
2021/01/04 10:36
あなたside










メロンパン号がいつもよりも派手になっている。誰かに落書きされていた。





伊吹さんと志摩さんに先に洗車を任せて、私は世人に話しかける





『世人、ちょっといい?』

九重「ん?」









カウンターに2人で座る。
陣馬さんと志摩さんは遠くで話しているから、多分聞こえないだろう。









『さっき、伊吹さんと志摩さんに全部話した。おじいちゃんの事も、警察官になった理由も全部。』

九重「そっか。
蒲郡さんが同じ薬を持っていたってのを聞いてから、それが原因だと思ってるんだけど」

『当たり』

九重「いつでも言って?俺はあなたの事1番分かってるから。」

『ありがとう。』








なんだかあまり満足してない顔の世人。
私はずっと一緒にいたから、少しの表情の変化も分かる。









『なんでそんな顔するの笑』

九重「俺、1番近いはずなのに全然守れてなかった」

『世人のせいじゃないよ。』

九重「もっと頼って欲しい、」

『うん。ありがと、』







さ、手伝いに行こ!と手を引いて立ち上がり、
歩き出そうとすると後ろから手を引かれ抱きしめられる
所詮、バックハグ状態。










『ん?世人?』

九重「落ち着く、」

『なんでよ笑』







1度離れ、真正面から抱きついてみる







九重「何も感じない?」

『ん?』

九重「俺とハグして、何も感じない?」

『んー、幼なじみだからあまり?
おっきくなったなぁとか、たまに甘えたがる所も変わらないなぁなんて思うけどね笑』

九重「そっか。
で、どっちが好きなの?」

『…へ?』

九重「伊吹さんと志摩さん。どっちが好きなの?」






急に、え、なになに、








『ちょ、九重くん。世人くん。九重世人くん、?』

九重「何?」

『この体勢で聞くことか?』

九重「…気になったから、」









正直自分でも分かってない。
どっちが好きかと言われても分からないし
そもそも2人のことを好きなのかも分からない。



ただ1つ、わかるのは
2人といると落ち着くし、2人のことが大切なんだってこと。










『正直、分からない』

九重「そっか。」

『うん、、』

九重「そろそろ行こうか」

『そうだね』









体が離れたところで、分駐所へ桔梗隊長が入ってきた。









桔梗「おはよう。うちに盗聴器が仕掛けられた件、進展があった。」








どうやら成川くんが防犯カメラに映っていたみたい。ちらっと世人の方を見ると、写真を食いつくように見ていた。












九重「あの!!

私が直接行ってはダメでしょうか」

桔梗「え?」

九重「あの時成川を見過ごしたのは自分です。あの時あたったのが、私でなければ、」

陣馬「だから毎度そんなに反省してたら身が持たねぇんだよ。
俺たち警察はできなかったことじゃなくてできたことを数えるんだ。」

九重「それでも、これから素知らぬ顔で職務に当たれるか、自信がありません。

お願いします、行かせてください」






隊長の前に行って頭を下げる世人。
私は良いと思うけどなぁ。





志摩「公私混同だな。」

『…!』

九重「っ、」

志摩「でも嫌いじゃない。」

伊吹「俺も〜」











良かったじゃん。





401の2人が分駐所を出る直前、私は世人に近付いた。








『頑張れ』




拳を突き出すとこつんと当ててくれた。






九重「ありがとう。行ってきます」








喝を入れたところで、伊吹さんと志摩さんに合流し、洗車を進めた。

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