第28話

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2021/01/06 09:00
あなたside










今日は密行がないから、分駐所で無線の手入れなどを3人で行っていた。
その時、志摩さんに電話がかかってきた。






志摩「…はい、分かりました。失礼します」

伊吹「隊長?」

志摩「あぁ。
ハムちゃんの事情聴取、やり直しになったらしい。俺たち404に送迎と付き添いを頼みたいと言われた。」

伊吹「もちろん、引き受けたよね?」

志摩「当たり前だ。俺たちにできることは何でもする」

『事情聴取、なぜやり直しになったんでしょうか』

志摩「ハムちゃんが嘘をついたんじゃないかって、組対のやつが言い出したらしい。」

『っ、麦さんが嘘なんてつくわけないのに…』

伊吹「何なんだよあいつら、ハムちゃんの気持ちも知らないで、、」

志摩「隊長もそう思ってるはず。だいぶご立腹だった。そうなるとますます、俺たちは役目を全うするまでだ。」

『そうですね』












数日後、麦さんを迎えに官舎まで行き、芝浦署まで連れてきた。





伊吹さんが手を引いて麦さんを車から降ろす。
その姿が、なんだか様になっていた。

2人が眩しく見えて、何故かモヤモヤする





志摩「…あなた?」

『あっ、ごめんなさい、』

志摩「いや、大丈夫。」





「機捜はここまでで、」

志摩「隊長に同行するように言われてるので」

伊吹「ボディーワンコです」

「…」

志摩「ボディーがワンコでどうする。ガードだろガード」

伊吹「ガードワンコです」

『…すみません無視して大丈夫です、』

「はぁ、」











麦さんの事情聴取を聞いているだけで、胸が苦しい。涙して訴えているのに信じてくれない組対は何なのだ。

悔しさと怒りが、同時に込み上げてきた





急に伊吹さんが手を握ってきた。
驚いて顔をあげると、伊吹さんも自分と同じことを思っていたのか、少し表情が固かった。それでも麦さんを安心させるために、なるべく真剣な表情をしていた。


そうだ、私もできることを全うするまで。



怒ってもしょうがない。犯人を捕まえるしかないんだ。









麦さんを送り、メロンパン号に乗り込む。
私はいつも後ろから乗っているから、後ろのドアを閉めようとしたら

後ろに影が見えた。







伊吹「『ん?』」

志摩「…2人してどうした?」

『伊吹さんも見えましたか?』

伊吹「うん。誰かいたね」

志摩「…見に行ってみるか」










出てきたその人は






伊吹「あっ!志摩!あなたちゃん!!
特派員RECじゃん!」

『あ、ナイトクローラーの、』

伊吹「あれやって!いつもの!あの!レックザ」

「「チェック」」

伊吹「そうそう!…っ、
お前何撮ってんだよ」

REC「ちょ!違法捜査!公権力の乱用でしょ!」

『…伊吹さん、』

志摩「返してやれ」

伊吹「…どーぞ」

志摩「あの、動画をあげるのは構いませんが、盗撮や虚偽の動画を広める行為は違法です。お気をつけて。」

『あと、以前あげていた彼に関する動画、』





伊吹さんを指さしながら話す






『あの動画はもう公開済みだし広まっている可能性もあるので仕方ありませんが、
警察に関する動画はこちらで削除させて頂く可能性があります。
これからは真実か虚偽が分からない情報は公開しないでください。私たちの捜査の邪魔になります。』

REC「…はーい。」








児島さんを送ったあと、志摩さんが頭をポンポンと撫でてきた
最近は志摩さんのスキンシップが多くて、ドキドキさせられっぱなし。





志摩「また強がったな。」

『…ごめんなさい、』

志摩「ダメってわけじゃない。それがあなたにとって辛くなってなければいい」

『今回のは、伊吹さんの為にと思ったら怖さはなかったです』

伊吹「マジー?めちゃくちゃ嬉しいんだけど!」






伊吹さんも頭をわしゃわしゃと撫でながら、ありがと〜と言ってくれた。








.
翌日





今日も麦さんの事情聴取の日。
今日私たちは送り迎えだけで、密行が終わったのと同時に芝浦署へ行き、麦さんを官舎まで送る。






志摩「伊吹、ハムちゃん迎えに行ってくれ」

伊吹「はーい」







私と志摩さんは、後ろのドアを開けて2人を待つ。
中の伊吹さんを見ると、麦さん見るなりデレデレしちゃって。


…って何だ、これだと麦さんに嫉妬してるみたいじゃんか。
麦さんは私たちが守らなきゃいけない大事な人なのだ。






麦さんを車に乗せて、私は外に出る。
なんだかこのふたりと同じ空間にいるのが、気まずそうだった。


車に乗りかけた伊吹さんが、私に気づいた





伊吹「あなたちゃん?」

『っあ、私ちょっと1機捜の方に用事あるの思い出したので!おふたりに送り迎え頼んでもいいですか?』

伊吹「ん、おっけおっけ〜」







車に乗る瞬間の伊吹さん、綺麗だったな
パーカーから覗く首筋、綺麗な首から続く綺麗な横顔、車に添えた綺麗な手、白くて綺麗な肌…


ダメだ、なんでこんなに伊吹さんのこと、まるで変態じゃないか……
それに、今はこんなこと考えてる場合じゃない。







なるべく笑顔で、3人を見送った後、
1つため息をついたら涙がこぼれた





『っ、何やってんだバカ、泣いてる場合じゃない、』





自分の涙を強引に拭って、1機捜の分駐所へ足を運ぶ。特に用事なんてなかったけれど、何故か足は自然と隊長室へ向かっていた。









スパイダー班の部屋を通る時、糸巻さんと谷山さんが何やら話し込んでいた






『お疲れ様です』

糸巻「おつか…佐野さんなにかありましたか?」

谷山「目真っ赤だぞ?」








優しく声をかけられると、さっき我慢した涙が溢れそうになる。





『ふふっ、大丈夫ですよ。さっき外で目にゴミ入って、、ちょっと擦っちゃいました、笑』

谷山「…そうか、あまり無理はするなよ」

糸巻「僕達でも、伊吹さんでも志摩さんでも、頼ってください。」

『おふたりこそ、忙しいじゃないですか。無理なさらないでくださいね』





2人が本当に優しいから。
止まらなくなった涙を隠すように歩き出す。






こんな状態だとどこに行っても不審がられる。
その時、急激に腹痛が襲った。





…まさか、と思いトイレに行く。
やはり、、、遅れていた生理がこのタイミングでやってきた。


もうなんで、なんでだろう、嫌なことばっか。ホルモンバランス崩れてるからこんなに変なことばっか考えて泣きたくなってるのかな





とりあえず分駐所へ戻ろう、そう思い歩き出す。


分駐所まであと少し、というところで
急激な腹痛と頭痛に襲われ、意識が遠のいた。

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