第11話

キス、とか
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2020/11/12 09:00
伊吹side













彼女がすっぴんを恥ずかしがって、なかなか顔を見せてくれない。









『そんなに恥ずかしい?』

佐野「めちゃくちゃ恥ずかしいです、、」

『俺は全然笑ったりバカにしたりしないよ?』

佐野「本当ですか?」

『もちろん。』







ゆっくりと手を下ろした彼女の顔は真っ赤だった。照れすぎていてこっちが照れる。

それにしても、



『かわいい、』

佐野「えっ」

『あ、ごめん!』

佐野「あ、いえ、大丈夫です。
いつも言ってくださるけど、今は特別恥ずかしいです」




伏し目がちにそう言う彼女が愛おしく感じてしまう。


少しでも彼女のことが知りたかった。


『ねぇ、あなたちゃんは何人の人と付き合ってきたの?』

佐野「わ、私恋愛したことなくて、、」

『え、ほんと?』

佐野「はい。高校までは写真が大好きだったのでそっちばっかりで。大人になったらちゃんとしようと思ってたらそんな暇なくて、、、」

『そっか、じゃあ何もしたことないんだね』

佐野「何も?」

『うん。その、キス、、とか、?』



そう言って遠慮がちに彼女を見ると、またまた顔を真っ赤にしていた。











.


あなたside







私の家で、伊吹さんと2人きり。
恋愛の話になって、、伊吹さんの口から出た“キス”という言葉。

自分には馴染みがないけど、なんだか恥ずかしくなった。










沈黙が続いたあと、伊吹さんに腕を引き寄せられ、抱きしめられた。








その後、両手を私の肩において、
ゆっくりと顔が近付いてきた。




キスされる、というのはわかった。
嫌だったら突き飛ばしていいよ、とばかりにとても優しく添えられた伊吹さんの手。


でも、突き飛ばしなんかできなくて。









受け入れるかのように、目を閉じた。






















唇に何も触れることなく、伊吹さんが頭を私の肩に乗せた。







『っえ、今のキスする流れ、ですよね』

伊吹「だよね。うん。ごめん、」

『いえ、全然、、』

伊吹「俺なんかがあなたちゃんのファーストキス奪っちゃっていいのかなって、考えたら申し訳なくて、、」










そんなこと考えてたんだ。少し意外だった。
いつも可愛いとか平気で言うから、そういうものには慣れているんだと勝手に思っていたが、違うみたいだ。









『...なってください、』

伊吹「え?」

『伊吹さんが、私のファーストキスの相手になってください、』







驚いた伊吹さんが勢いよく顔を上げた。
その顔はほんのり赤く染っている。




自分でも、なんでこんなことを言ったのか分からなかった。







伊吹「い、いいの?」

『...はい、』









伊吹さんは覚悟したように再び私に近付く

今度は頭の後ろを手で優しく押さえられ、
触れるだけのキスをされた。

初めてのキスは、すごく優しくて、恥ずかしかった

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