第108話

1+1 /jun
5,526
2022/03/18 15:57











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恋に落ちるきっかけは


多分人それぞれ。








一目見て好きになる人もいるし、


長い友達関係の末に付き合う子もいる。











私はまだ恋の初め方も、


好きになることも分からない。


























高一の春休み。




それは突然目の前に落ちてきた。









































me
いらっしゃいませ











春休みを返上して

私は今日もコンビニバイト。





時給もそこそこで店長も優しいし



暇が紛れると思えば

この時間もまぁ悪くない。











でも14時を過ぎてから客が減る時間が

絶妙に暇で退屈だ。













そんなさなか、


長身で綺麗な顔の男性が

こっちに向かってきた。







よく見ると隣の高校の制服を着ている。






























jun
jun
お願いします
me
はい
















見惚れるほど綺麗に整った顔立ち。




きゅっと少し上がった目尻と唇が

少しだけ猫に似てる。








そして落ちた視線の先に


目の前に置かれたひとつのミルクティー。







たしかこれは1+1



もうひとつ貰える商品のはずだ。























me
あの、
me
1+1なので
もうひとつ貰えますよ
jun
jun
あ、そうなんだね
jun
jun
ちょっとまってて








嬉しそうに目を細めて


そのまま冷蔵ケースに向かっていく。







少ししたら同じ商品を手にして

また嬉しそうに帰ってきた。

















me
ありがとうございます










お会計を済ませて

ミルクティーふたつを差し出すと、





片方を受け取り、


もう片方は私の方に押し返された。











えっ、と声を漏らして見上げると



くすりと笑う彼と目が合った。























jun
jun
ひとつどうぞㅎ
me
え!
me
いや、悪いです…
jun
jun
ひとりでふたつ飲むより
jun
jun
誰かと一緒の方が
美味しく感じるでしょ?
me
それは確かに、
jun
jun
じゃあね
me
あ、ちょっ…!












返事をする間もなく手に握らされ、




気が付けばもう


自動ドアを抜けた先の背中しか見えなかった。

















me
一緒、か









目が合った時の笑顔が頭に付いて




掛けられた言葉にも


ちょっとだけ嬉しい自分がいる。











名前、なんて言うのかな。


何年生だろう。





なぜだか彼のことが気になった。


























通学路の桜の花も開きつつある



今日から新学期。









暖かい風が頬を撫でて

春本番の陽気を言葉通りに肌で感じる。





何度経験してもこの季節はいいものだ。



















ばたばたと学校を終えて


向かう先は相変わらずバイト先のコンビニ。







桜並木を抜けて、


角を曲がった先にある紫の建物。









その入口横のベンチに


見覚えのある人。


































me
あ…
jun
jun
あ!
me
ミルクティーさん、ですよね
jun
jun
何それㅎㅎ
あだ名?
me
や、あの
名前分からなくて…!






必死で否定するように首を振ると


可笑しそうに声を立てて笑う。









レジ越しに会ったあの時よりも


柔らかい表情だった。





その雰囲気に私も少しほっとする。















jun
jun
文俊辉っていいます
me
あなたです
me
ムンさんは何年生ですか?
jun
jun
ジュンとかでいいよ
jun
jun
今日から3年生
me
じゃあジュン先輩?ですね
jun
jun
あなたちゃんは?
me
今日から2年生です
jun
jun
そっか〜











あ、そうだと手を打って


鞄の中からごそごそと何かを取りだした先輩。







出てきたのは

この前と同じミルクティー。



























jun
jun
はい
me
え?
jun
jun
友達になった証
jun
jun
これで1+1










出会った時のように



ミルクティーをひとつ、

私に握らせて





先輩は持っていたミルクティーを

コツンと合わせた。















me
ふふ
jun
jun
なになに?
me
ジュン先輩って
ちょっと変わってますねㅎ
jun
jun
え?そうかな























あなたと二人で分け合った今日は




忘れられない


甘いミルクティーの味がした。






































1+1

( この感情も共に分け合えたら )






















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