第106話

独り占めさせて/dino
5,797
2022/02/12 15:48










.
























冷えた廊下の壁に背をつけて

中から聞こえてくる2人の声に耳を澄ませる。




今日スケジュールあるって言ってたのに

スングァンオッパは
ほんとちゃっかりしてるよね。








手元の紙袋に目を落としながら溜息をひとつ。











me
タイミング間違えちゃったな






今日はチャニオッパの誕生日。


密かに思いを寄せている私にとっては
大切な日でもある。




だから今日は早くお祝いしたかったのだけれど

スケジュールが詰まってて
仕方なくこの時間になってしまった。




せっかく急いで事務所帰ってきたのに…






さっきVライブの通知飛ばしてたから

こりゃ当分出てこないなと悟って

くるりと踵を返した。














me
ただいまぁ
Joshua
Joshua
お、あなたおかえりㅎㅎ
Joshua
Joshua
会えた?
me
んーん
グァナオッパとお楽しみ中だよ
Joshua
Joshua
残念だったね
僕もまだ渡せそうにないㅎ
me
いいなぁ私も欲しい
Joshua
Joshua
あなたにはまた作ってあげる




リビングのソファで出迎えてくれた

スマホ片手に
にこにこと笑うシュアオッパ。




流れるように隣に座って
オッパの座ってる反対側に雪崩ると

ぽんぽんと頭を撫でられた。
















Joshua
Joshua
寝るの?
me
んー







もうチャニオッパなんて知らない、

そう思いながら目を閉じた。













































dino
dino
ちょっとあなた
dino
dino
こんなとこで寝ちゃダメだよ
me
んー…






薄い意識下で

大好きな声が聞こえる気がした。









夢かな…?

だってオッパはまだ帰ってきてないんだし。














dino
dino
あなた、




















帰ってきたらあなたがひとりで

リビングのソファに寝転んでた。






こんなとこで寝たら
ヒョンたちの目に付くから

ソファで寝転ばないでっていつも言ってるのに…












しゃがみこんで顔をのぞき込むと

しっかりと瞼を閉じて、唇は少し開いている。


いつもきりっとしてるあなたが少し幼く感じて
なんだか少し胸が騒ぐ。










一つ下、俺たちの大切なマンネ。


この小さい体でたくさんのものを背負っているのは
練習生の頃から
一番近くで見てきたから痛いほど分かる。



だから俺が守りたい。


あなたの笑顔も居場所も。





そう思いながらずっと見てきた。




















dino
dino
起きてって…ん?








華奢な肩を軽く揺すってあなたの腕を除けると

手元から小さな紙袋が出てきた。








なんだろう…





好奇心が勝って、

そっとその中身を見ると四角い箱と封筒が入っていた。





箱を開けると
細身で綺麗な硝子に入った香水が収まっている。


ラベルには19990211と印字されていて
あなたが使ってるメーカーと同じものだった。



シュアヒョンやディエイヒョンと仲良いからか
あなたはほんとにセンスがいい。







もうひとつ、真っ白な封筒には

「チャニオッパへ」という丸くて可愛らしい文字。




そっと開いてみれば
便箋1枚にきっちりと綺麗に文字が並んでいる。














______チャニオッパ


手紙を書くのは久しぶりだからすごく恥ずかしいねㅎ
でもせっかくの機会だから素直になってみるよ。

いつもオッパに助けられてばかりだね。
ダンスの練習、
私ができるようになるまで教えてくれてありがとう。
オッパのパフォーマンスは世界一だと思ってるよㅎ

入所したての頃、
ひとりぼっちだった私に手を伸ばしてくれてありがとう。
オッパがいつも傍で見ていてくれたから
私はこのグループにいていいんだって思えたんだ。
だから私もオッパの努力を誰よりも知ってる。
無理しちゃうところも全部知ってるよ。
疲れたらいつでも私のところに来てね。
私が必ずオッパの力になります、味方になります。


お誕生日おめでとう。
大好きだよ。


あなた ________________































me
ん…あれ、オッパ?






目を瞬かせた先にいたのは

会いたくて仕方なかったひと。








手に持ってるのは

一番に渡すはずだったプレゼントと手紙。





反射的に手を伸ばしたら

手紙を手に持ったまま両腕を回して
そのまま抱き留められた。












me
ちょ、オッパ!
dino
dino
ありがとあなた
me
ちゃんと渡すつもりだったのに…
dino
dino
ちゃんと受けとったよ?ㅎ
me
ほんとタイミング悪すぎ…




はぁ、と息を吐く私を宥めるように

大きな手が頭を撫でる。






オッパの腕の中、温かいな…











dino
dino
あなたのおかげで
最高の誕生日になった
me
ほんと?
dino
dino
うん
me
ならよかったㅎ
dino
dino
…あなた








そっと腕を離して

お互いに向かい合う。






ソファに座ってる
私の前にしゃがみこんでいるオッパは

高さ的に私の顔を覗き込むような感じになる。






真剣な瞳でこちらを見るから

恥ずかしくて目を合わせられない。














me
あぁ、そうだ
ハニオッパに呼ばれてるんだったㅎㅎ






この空気感から逃げたくて

約束もしてないことを口走って立ち上がる。




でもそれを許してはくれなくて

立ち上がった瞬間両手を掴まれてしまった。















me
っ、
dino
dino
行っちゃだめ
me
なんで、
dino
dino
今日が終わるまで
一緒にいて
me
…やだ
me
グァナオッパと
仲良くしてればいいじゃん…
dino
dino
あなたと一緒にいたい
dino
dino
お願い









取られた両手は柔らかく包まれて


まるでオッパの熱に溶けるみたい。












その手に促されるようにソファに座ると


口角を上げながら
もう一度彼の腕の中に収められた。


















dino
dino
今日だけは
独り占めさせてよ




















耳に届いた甘い言葉と

触れた唇の熱は




私の意識すら焦がしてしまうようだ。


















独り占めさせて

( 願うことなら、体も心も )













.































디노 생일축하해.


















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