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賑やかな車内。
1番後ろに座っているから
前で楽しそうに話すソアとジョンハン先輩、
それからハンソルくんが見える。
右隣には本を読むウォヌさん。
学校以外で会うのは初めてだから妙に緊張する…
話したい、
けどなんて声をかけよう。
突然隣から声をかけられて肩が跳ねた。
ばっとウォヌさんの方を向くと、
楽しそうに目を細めて笑っている。
少し恥ずかしくなって下を向いた。
え?
顔を上げると悪戯に笑う彼。
きゅっと心臓が握られたような、そんな感覚。
恥ずかしくなって、
顔に手を当ててながら視線を前に戻した。
落ち着け、落ち着け……
ふい、と横から指が伸びてきて、
右目の下にとんとん、と触れる。
ふぅん、
納得したようにそう言って指が離れる。
離れていく指を目で追うように視線を動かせば、真っ直ぐにこちらを見るウォヌさんと目が合った。
ふっ、と笑ってまた本を目を落とす。
そして、さっきよりも少し近くに座り直した。
肩と肩が触れる距離。
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すぐ近くから声が聞こえて目を覚ます。
あれ、私寝てた…?
ぱちっと目を開くと、こちらを覗き込むウォヌさんの綺麗な顔が飛び込んできた。
一気に覚醒した脳が今の状況を察知する。
彼の肩にもたれかかり、
更には膝の上に私の右手が乗っている。
そして、何故か私の左肩に回された彼の腕。
がばっと体を離して距離をとる。
でも肩に回された腕は離れない。
顔に熱が一気に集まるのが嫌でも分かる。
離れた私との距離を埋めるように
ぐっと顔が近付く。
こっちは心臓がうるさいくらいに鳴っているのに
なんでそんなに余裕綽々なんだ。
戸惑いながら言葉を紡ぐ。
この言葉の意味をどう捉えたか、
私には分からない。
何故、そんなにも君は
( 私に構うのだろう )
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編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。