第13話

君が想うより私は
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2021/04/02 13:05
「湯崎の妹なんだ。」
へ…?湯崎くんの…妹さん??
鶴谷くんは…湯崎くんの妹さんと。。。
水瀬は複雑な気持ちになった。
(まさか…鶴谷くんは湯崎くんの妹さんと再試に向けて練習する為にここへ…?私の為じゃなかったんだ…)
全身の力が抜けていくようだった。なにを期待していたんだろう。わかっていたことなのに。鶴谷くんは私に気がない。
「そ、そうなの?!なんだかすごい偶然だね、」
鶴谷が相槌を打つ。
「そうだね!」
水瀬は話題を変えようと思い、鶴谷に言う。
「あ、あのね鶴谷くん。わ、私そろそろ湯崎くんのところに行くね…、?お金返さないと」
そう言うと鶴谷は、
「俺も…湯崎の妹にいつ空いてるか聞くよ。」
にっこりと笑う。その笑顔は美しかった。
チャイムを押す。
ピンポーンという音が室内から聞こえる。

・・・

誰も出てこなかった。
「あれ、留守かな」
そう言いながら鶴谷はもう1度チャイムを押す。少しした後に室内から、なにか音がした。
ゴン
少し鈍い音だった。誰かが階段から落ちたりでもしたんだろうか。
その音を聞き、鶴谷が見回す。
「水瀬さん、今なにか聞こえなかった?」
「聞こえたよ。誰かいるのかな?」
鶴谷が心配そうな顔を浮かべる。水瀬も心配だった。湯崎くんじゃない誰かがいる、、?
水瀬はその考えをすぐにかき消した。
そんなことある訳がない…はずだ。
「と、とりあえず、今日のところは帰るね。今日はありがとう。じゃあね水瀬さん」
逃げるように鶴谷が帰っていく。水瀬はぽつんと取り残された。
水瀬はメモ帳を取り出し、紙を1枚ちぎった。そしてそこに、『カラオケ楽しかったです。 水瀬』と書いて封筒とともにポストに入れ、その場から足早に去った。
家に着くとすぐにベッドに寝転んだ。
今日は本当にいろいろなことがあった。
湯崎との実技が再試になり、街で鶴谷と会った。鶴谷も再試で、なんと湯崎の妹とらしい。
湯崎の家を訪ねたが、反応はなかった。また明日話そうと水瀬は思う。
(元はと言えば私がイけなかったからだ。湯崎くんにも鶴谷くんにも迷惑をかけて。。。)
「…ちょっと自分でもやった方が良いよね、」
寝転んだまま、水瀬はスカートの下に手を持っていく。すでにぐっしょり濡れていた。
(これは湯崎くんの、湯崎くんの…)
想像しながら指を挿れていく。呼吸が荒くなってくる。
(もっと…もっと掻き回してよ湯崎くん…)
「あんっ」
いけないと思っていたのに、つい声が出てしまう。
くちゅくちゅ
「…っ」
身体がびくっとする。
(イっ…た、?)

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