第14話

シラナイコト
827
2020/03/21 02:39
 ふと、そのお日様のような声にホッとする。私はその場に崩れ落ちた。
炭治郎
だ、大丈夫か?!
炭治郎くんは私の目をそっと手でふさいだ。そして耳元でそっと優しく呟いた。
炭治郎
鬼はね存在するんだよ。
ずっとずっと昔から。
でもね、
そんな鬼を斬るのが俺たちの仕事なんだ
「鬼は存在する」「ずっとずっと昔から」「そんな鬼を斬るのが」「炭治郎くんたちの仕事……」頭をこの言葉たちがループする。不思議と落ち着く。
あなた

お、鬼は存在するって……
鬼はなにをするの?鬼ってなんなの?

炭治郎
鬼はね人を食べるんだよ
優しい炭治郎くんの声が少し怒っているように聞こえた。少し怖い。
 炭治郎の手が私の目から離れる。炭治郎くんは私の顔を覗き混んでにこっと笑ってから指をさした。さっきの変態だ。鬼と言い張る変態。もしかしてあれってホントに……。
炭治郎
あれが鬼だ。
危なかったね。
もうすぐであなたが食われるところだった
当たり前のように「鬼」や「食われる」という単語を発する炭治郎くんに少し興味が湧いた。私立の賢い中学に入るための勉強をたくさんして、正直な話高校レベルの数式なら簡単に解ける。そんな私でも、知らないことがたくさん。増さしては鬼なんて空想の生き物だと思ってた。お化け、幽霊、妖怪……そんなもの一緒だと思ってた。
 そっと立ち上がる私を炭治郎くんは近くのバス停のベンチに案内してくれた。さっきまでいたところはここから見えない。炭治郎くんは私の隣に座ると言った。
炭治郎
さっきの鬼は善逸が斬ってくれるから
あなた

ぜ、善逸くんが……?

さっきまで一緒に双六をしていた友達が、まるでヒーローのような感じになっていて戸惑う。炭治郎くんのベルトには刀のようなものがついていた。
あなた

それは?刀?

炭治郎
そうだよ。刀だ。これで鬼を斬るんだ
 自分よりちょっと年上の人が刀を持ってる……って!それって
あなた

銃刀法違反で捕まるよ?

炭治郎
そうだね。捕まるね
あっさりと答えられた。どうしていいか分からなくなる。簡単に説明しよう。私の隣に座っているお日様のような青年は犯罪者。だって違法に刀を持ってる……。日本では銃や刀を勝手に所持してはいけないルールがある。破ったら捕まる。警察に捕まる。
炭治郎
俺たちは政府が認めていない団体だ。
人々の平和を守るため法律を破ってる
あぁ。私はよくわからない世界に飛び込んだのかもしれない。あのシェアハウスは魔界への入り口だったのかもしれない。
 私の頭が混乱しているとき、炭治郎くんは叫んだ。
炭治郎
あなた、ちょっと退いて!
 炭治郎くんが空を舞った。私の頭を飛び越えて、刀を振った。
炭治郎
水の呼吸 壱ノ型 水面斬り!
 ドサっと音がして私の足元に生首が転がる。物凄く臭い。ナマモノの匂い。腐った魚みたいだ。
炭治郎
あなた、家に帰ろう
あなた

う、うん………

 もう訳がわからない。とりあえず私は走る炭治郎くんの背中を全速力で追いかけるしかなかった。

プリ小説オーディオドラマ