第12話

帰り道
869
2020/03/14 15:54
 走って走って走って……。見た光景に私は目を疑った。何が起きているか分からないでその場に立ち尽くす。
 変態だ……。
 女の人の腕に噛みつく男の人を見つけてしまった。新手の変態だ!
 私は鞄からスマホを取り出し110番通報を試みる。
 怖い怖い怖い。
 変態に見つからないように影に隠れてキーボードを打つ。
 「はい、こちら100番です。事故ですか?事件ですか?」淡々とした冷静な声が聞こえてくる。『多分事件です』
 一部始終を見ていない私には事故なのか事件なのかわからない。でも、事故ならばあの男の人はすぐ女の人の腕から離れているはず。
女の人
キャァァァア!!!
 もう一度悲鳴があがる。
 流石に心配になって影から顔を出す。何が起きているのだろう?女の人をじっと見た。その瞬間私は外へ出たこと、ここへ来たことを後悔した。
 血だらけだ。
 女の人の腕……ジャケットが赤く染まっていた。
 これは警察だけじゃない、救急車も必要だ。119番を打とうとして躊躇う。
 まず、あの変態を何とかしなきゃ……!
あなた

えいやぁぁぁあ!!!

 右足を振り上げて変態に蹴りを入れる。
 空手も柔道も合気道も、習っていない。習ったこともない。教わったこともない。そんな私の蹴りだった。そんな蹴りをスパっと変態は避けた。
 なにこの変態……。
女の人
……っ……!
 腕を押さえながら女の人が喘ぐ。
 医療の技術もない。なにもできない。無力な自分ができることは、警察を呼ぶことだけだったみたいだ。
 たちまち変態は私の胸ぐらを掴んだ。
 この変態は……ただの変態じゃない……!
変態
お前、俺の食事を邪魔するなよ
 変態と目があった。
 人間じゃないくらい、鋭い目付きをしていた。
 食事……?
 まさか、女の人を食べようとしてないよね?
変態
その通りだが
 え、待って?私なにも話してないんだけど。
 え、怖い怖い怖い怖い怖い怖い!!!
変態
思考を読めるんだよ……鬼だからな
 は?鬼?

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