─────────やってきた文化祭当日。
学校中が鮮やかな装飾に彩られ、普段見ない顔である他校の生徒達も遊びに来ているので今日はいつも以上に賑やかな雰囲気が漂っている。
まあそんなこんなで、うちのクラスの出し物は大飛考案、所謂告白ステージ。
大飛は完全に自分の都合で提案したんだろうが、何故か多く票が集まってそれに決まってしまった訳なのだが。
むすっとした大飛に可愛さをおぼえる。ほんと色んな表情見せるよなこいつ。
正直2人きりでない事が寂しいのは大飛だけでは無い。だけど彪雅あっちゃんとまわりたい気持ちもあるし、確かに実際2人だけでは違和感がすごいと思うのでありがたいなと感じるくらいだ。
今回用意した告白ステージは、教室での出し物というよりは企画物。体育館を使って行うので、他団体との被りを避けるために時間指定がされているのだ。
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──────今は、呼び込みと看板につられ3年生の先輩達が企画している店に入ったところ。
ご飯が食べられると1番はしゃいでいるのは案の定彪雅だ。祭りの時もそうだったよな確か。
大飛はやまとで、ひたすらにもぐもぐ美味しそうに食べていて見てるこっちまで嬉しくなる。俺作ってないけど。笑
───焦る気持ちを抑えて何とか誤魔化し、店を出た。
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色々なクラスを回って時刻も4時を過ぎた頃。
見つけて俺が提案したのは、___「お化け屋敷」だ。
大飛が怖いのが苦手なのを知っている上での提案。ずっと前から行かせたいって思ってたんだよな。笑
ここでしかいれないであろう''2人''での行動というのにつられ、受け入れた大飛。
若干そわそわとしながら不安そうにしている大飛をつれて、目的地へと向かった。
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───手錠つけて進むとかカップルがやるやつだろ。
流石に暗闇でそんな近いのは色々と危ないと思い、断ろうとしたも遅く。
──────これに大飛が食いつかないわけなかった。そう言えばこいつあらゆる所で既成事実作ろうとしてくるんだったわ。入った後も気をつけないと。
ガシャン、と金属の擦れる音と共に、大飛の片手と俺の手は繋がれた。
そしてその手錠は思ったよりも頑丈で、無理やり外すことは出来なさそう。わざわざ外そうと思っている訳では無いけど、大丈夫かな、…
入った瞬間からびっくりする程の強い力で手を握られ、おぼつかない足取りで進む大飛の想像以上のビビりさに怖さよりも笑いが込み上げてくる。
______正直、逆にくっつきすぎてやばい。仮にも好きなやつ、こんな暗闇で抱きつかれているも同然のこの状況はどうなんだろう。
…まあ、俺も男だからさ。
___________ちょっとくらい。
_______トン
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大飛たちが去っていった後。
____こうして、密かに2人を応援するものが増えていくのはまた別のお話だ。
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────────お化け屋敷を出た後、足早に大飛たちの元を離れ、見回りにいく前に頭を冷やしに向かう。
大飛に既成事実作られないようにとか言っておいて、自分で作ってしまうところだった。
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付き合うまで手は出さないと決めていたにも関わらず、誰も見ていないというあの状況から理性に負けそうになった寸前。
良いのか悪いのか、タイミングよく後方から来た次の生徒の声によって引き戻された。
こうして、途中に出てくるお化けと、それにビビり散らかす大飛なんて諸戸もせずに俺はやまとの手を引いて終始無言で出口へと向かったのだった。
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この見回りを終えたら次はいよいよ自分達のクラスの出し物の時間になる。
まじでちゃんと頭冷やしてから行こ。笑
狂わされた調子を取り戻すように気持ちを切り替え、職員室へと向かった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。
登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。