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自由行動やら何やらを終え、今は宿泊先のホテルのベッドに倒れ込んでいる。
不慣れな海外での様々な予想外に、身体が追いつけていないようだった。……マジで疲れた。
まあ言ってしまえば、やまとのせいもある、八割くらい。…………いやそしたらほぼあいつじゃねぇか。
声をかけられると聞いてドキッとする。今日の日中の出来事が蘇ってきて、少し畏まってしまった。
悠馬も海外にいるうちに声をかけられたらしい。それも、何度も。
やはり海外のコミュ力恐るべし。
─────こういう時の悠馬の感は鋭い。
嫌な予感がしていると、ゆうまはそのままこちらを見透かすようにして言った。
確かに、俺は今日やまとが来ていなかったらどうなっていたかなんて分からない。あいつに助けられたのは事実だが、こうしてやまとにリードされてる状況だけは不服なのだ。ここにいる限りはとにかくやまとに振り回される気がして落ち着かない。
────コンコン
──少し離れているはずの先生棟。そこに生徒が3人。
ツッコミどころ満載だが、これは今すぐ帰らせた方がいいのだろうか。まあほかの先生に聞けば、言わずもがなでYesというだろうが。
無論、ここには今俺と悠馬しか居ない。
また新たな問題。こうしてホテルにいると、日中のように英語が飛び交う世界から離れられる様で疲れることも無く居られていたのに。これはまた波乱の匂いがしそうだ。
だがここで気づいた。ここは英語なんて使う必要の無い場所。全て日本語でも大丈夫なら日本とそう変わりない。つまり俺はあいつに振り回されることもないんだ。
そしてそう思うと、心に余裕が生まれてこの状況を離れるのが惜しくなった。……今日くらいね。
一度楽しむと決めたら楽しむのみ。
そして俺達は、このまま消灯時間ギリギリまで白熱したゲームを楽しんでしまったのであった。
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見回り担当時間が回ってきて、生徒3人を部屋に返そうとするとやまとから返ってきたのは、
─────まさに「爆弾発言」。
こいつ危機感無さすぎね?
───グイッ
ひゅうがとあっちゃんはゆうまと話していてこちらに意識が向いていない。
─────────今日散々されたし、ちょっとくらい、意地悪してもいいよね。
運がいいのか悪いのか、3人が帰った直後に同じ見回り担当の先生が部屋に来た。ほんとに危なかった。
果たしてあいつらは見つからず、無事に帰れるのだろうか。
ゲームやってる最中に誰か入ってこなくて良かった。笑
本当に危なかったのはどちらだろうか。
─────危ないなんて。 冗談、なんて。
卒業までは、なんて決めた俺が守らなくてどうするって話。____
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あれからアメリカを最大限満喫し、無事日本へと帰国した。あっちで色々とありすぎて、悠馬の言う通り日本での安心感がすごい。俺もう普通に日本語喋っても通じる世界なんだ。これが一番でかい。
海外に……いや、やまとに。
あいつに振り回され続けた4日間だった。
そして、次々にという感じでもう少しでやってくるのは冬休み。
確証なんて無いのにまた何やら波乱が起きそうで、俺は更なる不安を抱えながらそわそわと日々を過ごしたのだった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。
登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。