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大飛の通常運転には俺だけでなく、クラスメイトも慣れてきた様だ。今は学活、修学旅行の班決めを行っている最中。
ちなみに、文化祭後は再び地獄のテスト期間だった。
だが結果は最初の定期試験と同じく、大飛は学年トップ、彪雅は赤点補習に終わったのだ。
前回の異例があったせいか、圧倒的点数の大飛にも酷すぎる点数の彪雅にも再び初見相当の衝撃を受けてしまったが。
まあそんな中、心のどこかで安心してしまったのは気のせいじゃないと思う。
二人とも通常運転で良かった、という感じだ。笑
そんなこんなでテストも終え、二年生のこの時期は行事が詰まっており続けてやってきたのが修学旅行。
行く先はなんと、アメリカだ。
そう、俺はそんな初の海外旅行に楽しみを感じる分、懸念点も存在する。それは、英語があまり得意では無いということ。ある程度の会話くらい出来るとはいえ、それが本場でも通じるかどうかは知らない。
それに加え、やまとは英語が大の得意。だから今もこのようにして目を輝かせているのだ。先生に教える、と普段出来ない事を全力で楽しもうとしているのが伝わってくる。どうにかならないものか。
出発日はもうすぐ。そして時が経ち、そんな様々な感情を抱えながら俺たちは日本を旅立ったのだった。
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やってきたアメリカ。日本とは物のスケールが違くて圧倒された。
そして同時に止まらない、やまとの「''これなんて読むでしょう''大会。」読めて教えられるのが相当嬉しいんだろうな。笑
少し悔しい気もするが、俺は読めないのだし今回ばかりはしょうがない。やまとに頼らせてもらおう。
行動班はある程度決まっているものの、大きな規定はない。俺が行くとこ行くとこにやまとがちょこちょこついてくるので基本ずっと一緒にいる形だ。
なんだかんだ助かっているし一緒に居れるのは俺も嬉しいし良いんだけど。
そんなこんなでアメリカの街を探索しながら、数時間全力で楽しんだ。
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お昼をすぎた頃、街中を歩き回っていると後ろから声かけられた。あまり聞き慣れない言語だったので現地の方だろう。
あいにく今は丁度やまとがいなかった。
つまり通訳が居ない状況と同じ。上手く通じているかは分からないがとりあえず、と今持っている知識を使って交流を試みた。
____あれ、俺結構会話出来てるかも?
こちら側もある程度聞き取れるし、相手の人も特に違和感は無さそうでしっかりとしたレスポンスが出来ているはずだ。会話が成り立っているという事実に思わず浮かれる。
今までやまとに頼りっきりで悔しかったし、自分で会話できるならしてみよう。
…だが、そう調子に乗ったも束の間。
何も聞き取れなくなった。調子乗った瞬間これだ。
やっぱ英語苦手だわ俺。
定型文のような会話までは何とか乗り切れていたのだが、ここに来て分からない単語やら長文やらと難題が訪れる。それを何とか噛み砕いて、相手の表情から読み取ろうとした結果。
相手が通りを真っ直ぐ行った先の公道を指さしていた事から、どこかへ向かおうとしているんだと、そしてその道を聞かれているんだという考えまで至った。まあ普通に考えたら、そんなの俺がわかるはずないんだけど。
相変わらず何を言っているか分からなかったが、どうやら当たっていたのか、相手は満面の笑顔を見せそのまま俺の腕を引いて歩き出した。
…………けどよく考えたらこれ、おかしくない?
この人戸惑いなく真っ直ぐ歩いてるし、迷っているわけではないのだろうか。
ジェスチャー頼りの解釈に急に不安が訪れ、やっぱやまとに通訳して貰うべきだと思った瞬間。_______
やまとはこちらへ来るなり、俺ではなく相手の外国人の女性の方へ体を向けた。
対応してくれるのかななんて思ったのだが。
ペラペラと現地の人と同じように会話している姿に関心するも、そんな大飛はしばらくするとこちらを見て疑うような目をしてきた。
同時にやまとから放たれる雰囲気が普段とは違うものになっていく。
瞬間、急にやまとに強く腕を引かれ、後ろに引っ張られた。
終始理解しきれないままだが、何故か相手の外国人は不貞腐れるように帰って行った。
一件落着かと思えば、やはり先程からやまとの様子がおかしかった。こうして戸惑っている俺の助けに入ってきた時はいつも嬉しそうにしていたのに、今はむしろ、、
か細い声で萎れるようにそういったやまと。言われるまで気付かなかったが、まさかさっきの人にナンパされていたのだとは思いもしなかった。
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まさか、そんな会話が繰り広げられていたとは。
本当にまさかすぎる展開に予想もできなかった。
確かに、そしたら俺やばいよな、。普通に快く承諾しちゃってたし。笑
________は?
予想の斜め上の解決策と言われるそれについ声が大きくなってしまった。俺はどうやら知らない間に牽制されていたらしい。
俺なんて、したくても英語力ないから出来ないのに。笑
………こっちだって、ペラペラと楽しそうに他で話してるお前見てんのも嫉妬するっつの。絶対言わないけど。
_______いつも子供っぽくて怖がりで、寂しがりなくせに。
不意にこういうことするから調子狂うわ。
________今日はダメだ。完全にやまとにペースを掴まれた。
熱くなった顔を見られたくなくて、わしゃわしゃと大飛の髪を撫でた後慌てるやまとを置いて先を歩いた。
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編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!
転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。