❀太宰side
背中におぶっていた彼女をベットに寝かせてあげた。
私は締め付けられたネクタイを外し、上着を脱いだ。彼女は一向に起きる気配がない。
「ねぇ…私だって寂しかったのだよ?」
私は堪えきれず、仰向けで寝ている彼女の上に覆いかぶさった。
頬を撫で、頭を撫で、柔らかな髪に触れた。
今はただただ彼女に触れたい。
彼女の温もりを感じたい。
ー ー ー ー ー ー ー ー
彼女side
(ん…)
記憶が無い…
何故私は見覚えのない部屋のベットで寝ている…?
思い出せー!ここは何処だ!
私は額に手を当てて必死に記憶を呼び起こした。
(確か…店で酔い潰れて…その後に…)
「起きた?」
「へぇっ?!」
(何故隣に太宰さんが…?
しかも近い!顔が近い!!)
自分でも顔が熱くなるのが分かった。
「そんなに驚かなくてもいいじゃない。君が昨日店で酔い潰れていたから、私がおぶってきたのだよ。ここは私の家さ。」
そして彼は私の頭を撫でた。
「すみません…。太宰さんが来るまでお酒を飲んで待っていようと思ったら、いつの間にか眠ってしまったみたいで…」
「寝顔、可愛かったよ。」
恥ずかしさで鼓動が速くなるのが分かった。彼の眼を真っ直ぐ見つめる事すらできない。
ーでも…
でもどんな感情よりも、彼に逢えたこと、彼の声を聞けたこと、彼に触れたこと、彼の温もりを感じたことに対しての嬉しさが勝っていた。
私はこんなにも太宰さんを愛している。
「太宰さん。」
「ん…?なぁに?」
「…逢いたかった。」
私はゆっくりと微笑んだ。
彼の眼を見つめて。
「私もだよ。」
彼もゆっくりと微笑んだ。
彼の手が私の腰にまわって抱き寄せられると、私は眼をとじ、
そっと口付けた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。
登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。