第2話

2話 名前
33
2020/07/14 09:59
今日は朝、すぐに身支度を済ませて昨日佐久夜と会った場所へと所に向かった。
麗桜
麗桜
勢いで来ちゃったけど佐久夜いるかな?
そうして昨日と同じ古い桜の木がある場所に着くと暖かな春風に乗せられて花のような甘い、いい香りがしてきた。
(なんだろう?)
佐久夜
佐久夜
麗桜
麗桜
麗桜
麗桜
麗桜
佐久夜は本当に神出鬼没だな。
佐久夜
佐久夜
ふふっ、そう?
佐久夜
佐久夜
ねえ、私達ってぴったりだと思わない?
麗桜
麗桜
いきなり何を言ってるの。
佐久夜
佐久夜
木花 佐久夜って桜の神様の名前に似てるの。
佐久夜は僕の問いには答えずに話を続けた。
佐久夜
佐久夜
そして麗桜の桜は桜って字でしょ。
佐久夜
佐久夜
桜の木の下で出会った桜の名前の2人。
佐久夜
佐久夜
ねっ
麗桜
麗桜
…………
大嫌いなこの名前をそんなふうに言われるは胸が締め付けられるようで苦しかった。
そして沈黙の末、僕は言葉を振り絞った。
麗桜
麗桜
…僕は、この名前が、大嫌いだ。
この時僕はきっと、酷い顔をしていただろう。
でも、佐久夜は
佐久夜
佐久夜
私は、好きだよ。あなたの名前。
そう言ってくれて
佐久夜はとても穏やかで優しく、少し寂しそうに笑った。
佐久夜
佐久夜
乃風 麗桜って春の満開の桜へ暖かい風が優しく吹いてるみたいでとっても好き。あなたにぴったり。
麗桜
麗桜
そんな訳っ…
僕は思わず歯を食いしばり、
麗桜
麗桜
似合う?この名前が?
僕は漫画が好きで成績も悪くて暗いだけの僕が?
一気に早口で捲し立てるようにそう吐き捨てた。
僕は、何度も見た。
僕を見ながら、
「可愛らしいお名前ですね」と苦笑するのを
佐久夜
佐久夜
佐久夜
佐久夜
……辛かったね…
そういうと佐久夜は僕の両手を包み込むようにして握った。
麗桜
麗桜
…っ
鼻の奥がツーンとした。
麗桜
麗桜
なっ、何するんだ…
僕がその手を振り払おうとすると佐久夜は握っている手に力を入れ、自分の額に当てた。
佐久夜
佐久夜
…辛かったね…
その言葉を聞いて何故か目に涙が溢れてきて、佐久夜に見らめまいと慌てて下を向いた。
佐久夜
佐久夜
ないても、いいんだよ。
僕は今度こそ佐久夜の手を振り払うとベンチの上に置いてあった鞄をひったくる様に掴んで、走り出した。
佐久夜は止めなかった。
止めてくれなかった。
僕は心のどこかで、佐久夜が「行かないで」と、止めてくれることを期待していた。
僕は自分が情けなかった。許せなかった。
佐久夜がこんな僕に「また」と言ってくれたから、優しく、普通に接してくれるからと自分を必要としてくれるのではないか、大切にしてくれるのではないかと期待していた自分に。
所詮、僕はゴミクズと同じくらいの人間なんだ。
こんな事を他人に期待していいような人間じゃない。
















僕は、家に帰ると、壊れた様に泣き喚いた。

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