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第3話

呼ばれる
17
2020/11/10 22:38
あの後、一度も、あの場所には行っていない。
学校にも行かずに、カーテンを締め切った薄暗い部屋にずっと籠っている。
僕は何もせずに虚ろな目で宙を見上げていた。
そこには無い、もっと違うところを見つめていた。
✫✫✫✫✫✫
僕は人と話すのも、同じ空間にいるのもに苦手、困難なんだ。
同じ空間にいるのが困難ってどういう事なのかだって?
それは、気まずいどころじゃないような形容し難い、もがいて抜け出したい苦しい空気になる。
自分も相手も、気分が悪くなるような。
僕は他人と関わっちゃいけないんだ。
だから神は、僕の周りの人達を奪っていったんだ。
窓の外から、打ちつけるような雨と雷の音が聞こえた。
それが僕には世界中の全てのものが責めているように聞こえる。
ー…お
麗桜
麗桜
頭の中に何かが聞こえた。
ー…お
自分の声ではないようだ。
何か言っている。
(何を言っているんだ、それじゃ聞こえないよ!)
僕は頭の中に響く声を聞こうと耳を澄ました。
ー…りお
自分の名前を言っているのが聞こえた。
でも、そんなの聞こえる訳ない。だってここは建物の中で、家の中には僕以外誰も居ないのに。
ー麗桜
麗桜
麗桜
!!
今、はっきりと聞こえた。
でもそんな事、あるはずない。
今聞こえた声は何をどう間違えようか、佐久夜の声だった。
いや、でもきっと今のは僕の幻聴だ。部屋に籠りすぎて頭がおかしくなってしまったのだろう。
ー麗桜
その時、頭の奥がツキッと痛んでもう一度声が聞こえた。
(行かなきゃ)
何故か分からないけどそう思った。
✫✫✫✫✫✫
麗桜
麗桜
…は?
麗桜
麗桜
僕、いつここに来たんだ…?
気づいたら僕は、あの桜の木の前に立っていた。
麗桜
麗桜
??
佐久夜
佐久夜
ごめんね。
麗桜
麗桜
佐久夜
佐久夜
ちょっと強引過ぎちゃったかな。
麗桜
麗桜
さっき、僕になんか言った?
佐久夜
佐久夜
ん?ああ、それね。説明するのが難しいんだけど…
麗桜
麗桜
佐久夜
佐久夜
やっぱりひみつ!
(そんなふうにいわれたら余計気になるじゃないか)
麗桜
麗桜
はぁ…
佐久夜
佐久夜
ニコッ
佐久夜
佐久夜
ねぇ、少しおしゃべりしようよ
麗桜
麗桜
もうしてるでしょ
佐久夜
佐久夜
麗桜のいじわる
そう言って彼女は頬を膨らませた。
麗桜
麗桜
で、何を喋るの?
佐久夜
佐久夜
やった、麗桜優しい!
麗桜
麗桜
べ、別に、そんな事…///
佐久夜
佐久夜
かわいいヨシヨシ
佐久夜が僕の頭を撫でる。
麗桜
麗桜
///っっ〜…
(どうして佐久夜はこんな事を恥ずかしげもなくできるんだろう)
麗桜
麗桜
やっ、やめて///
佐久夜
佐久夜
なんでー?少しくらいいいじゃん
佐久夜
佐久夜
ねっねっ?いいでしょっ?
麗桜
麗桜
子供かっ!
佐久夜
佐久夜
プンッ
麗桜
麗桜
はぁ、用がないなら僕は帰るよ
佐久夜
佐久夜
えぇぇ!?帰っちゃうの?
麗桜
麗桜
用はないんでしょ
佐久夜
佐久夜
ないけど…
佐久夜
佐久夜
1人だとつまんないだよ
麗桜
麗桜
1人?
佐久夜
佐久夜
うん
まさか、彼女も僕と同じ様に親がいないのだろうか?
佐久夜
佐久夜
ハッ
佐久夜
佐久夜
今のはなしにしてくれる?
麗桜
麗桜
え…うん
彼女はなんでこんなに明るいんだろうか。
僕を巻き込んで、心を動かしてしまうほどに

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