コンコンッ
部屋のドアを叩く音がする。
たくみくんだ。
さっきみんなにいじられていじけてたから
気を遣ってくれてるみたい。
川沿いの道をたくみくんと2人で歩く。
ここは3月末ごろにはすごく綺麗な桜が咲くんだよね。
たくみくんはピンクの髪を隠すように帽子をかぶってる。
ピンクのベレー帽がこんなに似合う男性は
きっとこの人しかいない。
ふと川に目を向けると、
なにか小さいものが向こう側の川岸の石の上にいる。
よーく見てみると、猫だった。
震えている。
川はそんなに大きくないけど
川岸には石がいくつかあるだけだし、
側壁が2メートルほどあるので
身動きが取れなくなってしまったみたいだ。
橋を渡り、たくみくんが対岸の上から手を伸ばす。
しかし、辺りを見回しても階段などはない。
足場は猫が乗ってる石の横にある
あの大きめの石しかない。
いけるか??
勇気を出して、、、
ザッ
目的の石の上に着地できた。
そう言って、猫を抱き上げ、
たくみくんに渡した瞬間、
ツルッ
やばっ
倒れる!
バシャーーーーンッ!!
意外と川は浅くて、水位は腰までくらいだった。
やっとのことで立ち上がる。
こんなに濡れるの水道管破裂ぶりだわ。
今年は水に関して運が悪いのかもしれないな。
たくみくんもジャンプして川に飛び込む。
バシャーーーーン!!
そう言って水を思いっきりぶっかけてくる。
そっちがその気なら戦ってやるわ!
あなたも水をすくってたくみくんにかけまくる。
髪の毛をしたたる水がキラキラと光って
たくみくんがより一層かっこよく見える。
アイドルだもんなぁ。
水遊びに夢中になり過ぎて、
いつのまにか夕方になってる。
めちゃくちゃ焦ったけど、
たまたま通りかかったおじさんがハシゴを下ろしてくれて
上にあがることができた。
本当に助かった。
家に帰ろう。
赤く染まった夕日がとても綺麗だ。
横を向くと水浸しのたくみくんが
口角を上げて笑っている。
思わず私も笑っちゃう。
またしょうくんに怒られる〜!
なんて言いながら
笑い合う帰り道。
キラキラとしたたくみくんの笑顔に
私はもう釘付けです。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。