第51話

51 お願い
2,160
2020/05/07 15:46
お昼休み

萌
え、じゅんきじゃん。

萌がスマホをのぞいてくる。
あなた

いろんな人の見てみたいな、と思って!
じゅんきくん元気ですごいね。

萌
でしょ。
萌
そうだ、そんなことはいいけど、
最近ココロちゃんどう?
まだ移植見つからない?

ココロちゃんは小児科との共診だから

萌も知ってる。
あなた

うん、あんまり調子良くなくて…










午後もココロちゃんのところへ回診する。
あなた

ココロちゃん?

ココロちゃん
ココロちゃん
先生、息があんまり、できない、、、
あなた

え?ココロちゃん!!
ココロちゃん!

体を揺さぶっても反応がない。



ナースコールを押し、
あなた

救急カート!!!

すぐに本田先生も走ってくる。
本田先生
本田先生
ココロちゃん!?
ココロちゃん!!
大丈夫だよ。
ゆっくり息してー。
苦しそうなココロちゃん。





心臓が止まる。
あなた

心停止!

ココロちゃんの心臓マッサージを始める。






ぐっぐっぐっぐっ






お願い、







お願い戻ってきて。





本田先生
本田先生
ココロちゃん!!
あなた

ココロちゃん!!

あなた

お願い!!!





ぐっぐっぐっぐっ







心臓マッサージを続ける。







でも、、







全然戻らない。



















ココロちゃんは亡くなった。















あっけなすぎる。













ココロちゃん、本当に死んじゃったの…?















その後エンゼルケアをして


ご家族をお見送りした。











実感が湧かなくて


なぜか涙が出てこない。





立ち尽くしていると、
本田先生が肩を揺すってくれる。


本田先生
本田先生
救える命と救えない命はある。
前を向けよ。


人が死ぬって


こんなにあっけないものなの?



医師として働くかぎり、こういうことは必ずある。


あるってわかってはいたけど、


実際に目の前で起こるのは初めてで、


とても恐ろしかった。
























なんだかふわふわしたまま家に帰る。
JO1
JO1
おかえり。
あなた

ただいま。

みんなはごはんを食べてる。
しょう
しょう
あなたも食べるでしょ?
あなた

すみません。
今日はいいです。
やることがあるので。

あなた

ありがとうございます。

笑おうと思うけど、


作り笑顔になってしまう。


足早に部屋に戻った。



部屋に戻った瞬間、


ココロちゃんと過ごした時間が頭の中で蘇る。



もっとなにかしてあげられたんじゃないか、


もっと早く異変に気づいていたら、


そんなことばかり考えてしまう。




さっきまで一滴も出なかった涙が


急に溢れ出した。

プリ小説オーディオドラマ