お昼休み
萌がスマホをのぞいてくる。
ココロちゃんは小児科との共診だから
萌も知ってる。
午後もココロちゃんのところへ回診する。
体を揺さぶっても反応がない。
ナースコールを押し、
すぐに本田先生も走ってくる。
苦しそうなココロちゃん。
心臓が止まる。
ココロちゃんの心臓マッサージを始める。
ぐっぐっぐっぐっ
お願い、
お願い戻ってきて。
ぐっぐっぐっぐっ
心臓マッサージを続ける。
でも、、
全然戻らない。
ココロちゃんは亡くなった。
あっけなすぎる。
ココロちゃん、本当に死んじゃったの…?
その後エンゼルケアをして
ご家族をお見送りした。
実感が湧かなくて
なぜか涙が出てこない。
立ち尽くしていると、
本田先生が肩を揺すってくれる。
人が死ぬって
こんなにあっけないものなの?
医師として働くかぎり、こういうことは必ずある。
あるってわかってはいたけど、
実際に目の前で起こるのは初めてで、
とても恐ろしかった。
なんだかふわふわしたまま家に帰る。
みんなはごはんを食べてる。
笑おうと思うけど、
作り笑顔になってしまう。
足早に部屋に戻った。
部屋に戻った瞬間、
ココロちゃんと過ごした時間が頭の中で蘇る。
もっとなにかしてあげられたんじゃないか、
もっと早く異変に気づいていたら、
そんなことばかり考えてしまう。
さっきまで一滴も出なかった涙が
急に溢れ出した。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!