思わず一緒に買い物にでも行かない?とウジくんを誘ったはいいが…思ったらこれってデートになるんじゃないのか…?今更ながら私は自分の服装を見直した。
決して変ではないと思うが、デートに向いてる服装なのかと言われれば…もう少し気合を入れても良かったのかもしれない…。
ウジくんは深くキャップを被りマスクをつけている。
足元はお決まりのサンダルスタイルだ。
ウジくんらしい…。
それに万が一撮られるような事があっても困るしな…。ちょうどいいラフさがあった。
しばらく歩いていると雑貨屋さんが目に入ってきた。
特に何か欲しいものがあるわけではないが、雑貨屋さんを見るのは好きでよくブラブラする時に入ることがある。
店内はアクセサリー類が結構多いようだった。
男前すぎる発言に私はついていけなかったが…冗談で言ったつもりのお揃いのものを付けるという提案は、ウジくん的にはまんざらではないようで、楽しそうに何にするか選んでいた。
まるで、恋人同士のよう…って付き合ってもないんだけど…
気前良すぎか…男前すぎか?ウジくん…まだ君21とか22歳とかじゃなかったでしたっけ?
私は彼の男らしさらに圧倒され何も言えなかった…。
結局ブレスレットはウジくんが買った。
私は左手をウジくんの方へ差し出した。
するとウジくんはさっき選んだブレスレットを私の手首につけてくれた。
私はウジくんからブレスレットを預かり、ウジくんの左手首にブレスレットを通した。
デザインは同じだがシルバーの色の線の細いブレスレットは色の白い繊細な手にとても似合っていた。
お店を出て暫く歩いている時だった。
そう言ってウジくんは私の手を取り早歩きでファンの子達から見えないところまでスタスタと歩き始める。
心無しかウジくん…いや、ジフンは照れているように見えた。
可愛いな…と思いながらそのままブラブラたわいも無い話をしながら歩いていた時、ふと私は喉が渇いて、飲み物を買ってくるねと伝えて少し彼と離れた。
私は自動販売機でコーラとお茶を買ってジフンのもとに戻ろうとした。
その時だった…
そう言って知らない男達は私の右手を掴んできた。振りほどこうとするが、男性相手の力には勝てない。
気持ち悪い…!!!
こんな絵に書いたようなナンパ久しぶりに見た…と感心している場合でなく…
手を掴んできていないもう1人の男は私の腰に手を回してきた。
気持ち悪すぎて鳥肌が立っているのが分かる。
怖くて大きな声が出せない。いつもの私なら出せると思うのに、力が叶わず恐怖の方が強かった。
助けて…ジフン…助けて!!
心の中で叫んでいたその時だった。
そう言いながら、ナンパしてきた男2人は私から手を離しジフンから逃げるように去っていった。
私はその瞬間気が抜けてふらついてしまった。
ジフンは本当に男らしい。すごく頼もしく見えた。
コーラを飲みながら歩くジフンの後ろ姿を見ながら、私はジフンの左手首に光るブレスレットを眺めていた。
なんで私なんだろう…?
謎めく想いが強いことは変わりなかったが、今日はジフンを独り占めしたいなと思ってしまい、気づいたらジフンの元へ駆け寄って左手を握りしめていた。
その後特に何かを話すことはなくただ手を繋いでゆっくりと秋風に吹かれて散っていく木の葉を見ながら歩いた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!