私は朝から憂鬱な気分でしか無かった。
やっと韓国に戻れる日だというのに、ジフンにやっと会えるというのに、最も会いたくなかった人が私の隣でニコニコ笑っている。
飛行機の搭乗前だというのに、この人はずっとペラペラと喋っている。
そして結局メンバー分の搭乗の手続きも全部私がやっている。こいつはマジで何をしに行くんだろうか…。
彼はまだ韓国語が分かる訳では無い。
メンバーもそれが分かっているのか普通に韓国語で彼のことをやんわり毛嫌いしている。
特に女子2人からの印象は悪いようだ…。
ダメだ、本気でぶっ飛ばしたくなる。
この人はこういう人だって事を忘れていた。
仕事は全く出来ず、他人任せでいつものんびりケラケラしている、なんで私はこの人と付き合ってたんだろうと謎で仕方ない。
苛立ちを抑えながら、私はできる限り平常心を心がけ、ひたすらあと少しでジフンに会えると心の中で唱え続けた。
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韓国までの飛行はメンバーも含めて私も爆睡してしまい、あっという間のフライトだった。
本当に仕事が出来ない人だなとつくづく思った。
この人が営業から外されたのも、きっとこの常識のなさが原因だったのだろう。
完全にメンバーからの印象も悪くなってきている…。
少しと言えどメンバーは日本語も上達してきている。敢えて韓国語で話しているあたり、ヤバそうだ。
本当に憂鬱でしかないと思いながら、竹内さんも含めて車に乗り込み、宿舎へと帰宅した。
帰ったら自由だ。SEVENTEENの皆に会いに行こう、ジフンに会いに行こう。
本気でイライラしすぎて皆から癒しが欲しいとそればかり考えていた。
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宿舎に着いて、私は竹内さんを捲るためにこの後残ってる仕事を片付けないといけないから、ちょっと出てくると伝えて私はプレディスの事務所でとりあえず避難することにした。
仕事が出来ない、女たらしという事は分かっていたものの、今までは一緒に仕事をしてきた訳では無いので、ここまで酷いとは思っていなかったのだ。
私はカトクを立ち上げてジフンへ「韓国戻ってきたよ、事務所に居るから練習終わったら連絡頂戴」とメッセージを送った。
すると、直ぐに既読になり「早く会いたい、作業部屋で待ってて」…と返事が返ってきた。
私はジフンの作業部屋へと向かい扉を開け、部屋の電気を付けて、なんとなくいつもジフンが座っている椅子に腰掛けた。
目の前にはMacのディスプレイ、横にはキーボードなどもあり、改めてSEVENTEENの楽曲がここで生まれているんだなと感慨深い気持ちになった。
そう呟きながら、やることも無く私は自分のパソコンの電源を付けて、ジフンが来るまで自分の仕事を片付けることにした。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!