私は胸が高まっていた。
私の目線の先には、ジフンがステージに立ち、沢山のファンの子達に手を振っている。
私はそんなファンの子達に混じって、花道のすぐ横のアリーナ席からジフンを眺めていた。
もうすぐジフンが私の所まで歩いてくる。
するとジフンが私に気づき、ニコッと笑って手を振った、そして言ったのだ「君のために歌うよ」…と…。
私はビックリしてぼーっとしてしまっていた。
隣のファンの子達も自分と目が合ったとキャーキャー騒いでいる。
あぁ…自分がもしファンだったら、仕事の繋がりはなくてただのファンの1人だったらジフンと特別な関係にはなれなかったのかもしれない、そう思うと切なくて辛くて私はただただ泣きじゃくっていた。
*****
…?ジフンの声がする。
あれ…?私…今どこに居るんだっけ?
ジフンは心配そうに私の頬に触れて零れた涙を拭ってくれた。
正直LiGHtの5月カムバックも急な話だ。
1曲も出来上がってない為、後3ヶ月弱で楽曲を作り込まないといけないという超絶無理なスケジュールではあるが…。
ジフンに楽曲を提供してもらえて…
尚且つ私が作った曲をジフンがSEVENTEENの皆が歌ってくれる。それだけでもかなり有難い事だったし、挑戦してみたいと思った。
さっき戻ってきた時に自分のデスクにSEVENTEENの6枚目のミニアルバム、YOU MADE MY DAWNが置かれてあるのに気づき、作業部屋に持ってきていたのをすっかり忘れていた。
律儀に3形態1枚ずつ置いてくれたのは恐らく石川さんだろう。
ジフンは恥ずかしいのか黙りこくったまま、アルバムを開ける姿を見ている。
ホシくんとドギョムくんにも会いたいな…と思いながら私はジフンのレンチを動かしながら見ていた。
満更でもないような、少し恥ずかしがった顔つきでジフンは笑った。
笑ったジフンを見るのは本当に久しぶりのような気がして、私もつられて笑ってしまった。
私はジフンの目の前に立ち目の前にいるジフンの目を見た。ジフンもしっかりと目を合わせてくれて、にっこりと笑った。
緊張と恥ずかしさが入り交じり目が合わせられなくなってくる…。
キュッと瞼を閉じた時には唇に暖かな感触を感じた。
互いにやっぱり恥ずかしくなってしまい目を逸らしてしまう。でもそんなぎこちなさが何だか嬉しくて、私もジフンも笑っていた。
私は少しだけ先を歩くジフンの後ろ姿を追いながら作業部屋を後にした。
この時は宿舎にアイツが居ることなんて忘れ去っており、幸せな気持ちいっぱいでジフンと車に乗り込んだのだった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。