たまたまだった。
気まぐれでメンバーの買い物に付き添った事で俺は忘れられない出会いをする事になる。
この時はこの人が大事な人になるなんて思いもしていなかったんだ…。
*****
ハニヒョンやホシが欲しいものがあるからと明洞に出かけると言い俺はなんとなく着いて行った、そしたらファンに早々に見つかってしまい、駅の周りはいつの間にか人集りになってしまっていた。
俺らはその場を立ち去ろうとするも、俺らを追ってくるようにファンの子達は着いてくる。
集まった人達が一度に移動する事によってお祭り状態だった。
そんな状況だ、一般人も歩きずらそうにしているのは見えていた。そんな時だった。
ホシがいきなり叫んだのだ。
ホシの目線を辿ると一人の女性が階段から落ちそうになっていたが、気づいた時にはもう遅く大きな音を立てて何十段かの階段から落ちていっていた。
ファンの子達もそれを見た子が居たのか、悲鳴が聞こえる。
そう言い何とかファンの波を掻き分けて、転落した女性の元へと向かった。
女性は韓国語ではなく日本語を喋っているようだった。だが、すぐに気を失ってしまったのだ。
ジョンハンはそう言うと直ぐに救急車を呼びにその場を離れた。
辺りはこの女性が持っていたキャリーケースの他に手持ちの鞄から飛び出したポーチや財布などが散乱していた。
散乱した床には楽譜が何枚も散らばって居た。
よく見ると日本語の歌詞も記載されているようだった。
散らばっていた紙類も含めて一通り拾い改めて鞄の中を見るとパスポートが入っていた為、スムーズに病院に行くことが出来た。
そのまま救急隊員に託しても良かったのだが、この場にいたメンバー全員が後味が悪く、一緒に病院までついて行くことにした。
確かに彼女の寝顔はすごく整っており、もしかしたらその辺の有名人より綺麗な顔立ちをしているのではないかと思った。
奇声を上げていきなり目覚めた彼女は、可愛いと言うよりも美人な顔つきで少しドキッとしてしまった。
長い黒髪が少し乱れている。
看護師が日本語ができるらしく通訳をしてもらって彼女と話をした。
日本から仕事で韓国にきたこと。
またレコード会社に勤めている事。
それで楽譜を持っていたのかと俺は納得した。
ただ、彼女の話はあまり状況が良くなさそうだなと思った。会社のスタンスなのかは分からないが、あまりにも準備をしてなさすぎるなと少し呆れていた。
ホテルも取っていないからこれから探すという話をした時に何故かホシが宿舎に来ればいいなんて話をし始めて…
あなたは俺らの宿舎に来ることになった。
まぁどうでもいいかという気持ちがこの時は大きく、そのまま宿舎に連れて帰ることになったのだった。
*****
宿舎までの道のりを歩いている時、あなたは重そうにキャリーケースを引っ張っていた。
まだ身体が痛むのかあまりスムーズに歩けていないようだった。
ハニヒョンやジスヒョンも心配はしているが、流石の日本人と言ったところか…とても謙遜し持たなくていいと言う。
そんな姿を見るに見兼ねて言ってしまった。
彼女はビックリした顔をしたが、すぐに「ウジくん、カムサハムニダー」と言ってくれた。
彼女に名前を呼ばれお礼の言葉を伝えられただけなのに何故か凄く顔が熱くなるのを感じた。
彼女の方を改めて見ると、さっきまでキリッとしていた目元が崩れ、とても朗らかに笑っていた。
とっても可愛い子だな…
素直にそう思った。
こいつらが俺に何を言わせたいのかもう分かってる、言えばいいんだろ?言えば!
恥ずかしくて死にそうだった。
もう口を聞かねぇと決め込む。
ジスヒョンやハニヒョンにはいじられたが、気づくともう宿舎の目の前だった。
これからどうなるんだよ…と呆れながらも、彼女が宿舎に来ることを少し楽しみにしている自分もいるような気がして何だかもどかしくなった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。