1日過ぎ去るのがあっという間すぎて、また次の日からも音楽番組の収録やバラエティ番組の収録、ラジオに雑誌撮影にと目まぐるしい毎日だった。
これまでにないくらい忙しい。
けれど、メンバーは若いからかそんな疲れも一切見せず、毎回いいパフォーマンスをしてくれている。
かくいう私も今のこの状況が楽しくて仕方ない。
体力的には結構しんどいのだが、みんなの為ならと頑張れている。
今日もまた色んなスケジュールをこなして、ホテルのベッドに倒れ込んでいる所だった。
日本に来てから定期的には連絡しているが、そんなに毎日ってほど連絡は取っていなかった。
実際そんな余裕が無いくらいに忙しいというのが本音だが、ジフンもジフンで忙しいだろうし…と思うとなかなか連絡しずらいというのもあった。
だが、今日は何だかジフンの声が聴きたい。
私はまずカトクを送ってみる事にした。
「ジフン起きてる?」とシンプルに、そうするとすぐに既読になった。
すんなり良いよと貰えて嬉しくなった。
私は寝転んでいた体を起こし、なんとなくベッドの上で正座する。
なんだかんだこうやって日本に来て電話をするのは初めてだからか、なんかちょっと緊張する。
スマホを操作し発信ボタンを押す。
プルルルルと待機音が鳴り、2コールくらいで待機音が止んだ。
ジフンだ…ジフンの声だと何故か分からないが妙な安心感を抱いた。
本当に大変だったのだ…
プレディス側もうちの会社側も私の名前を売ったらもっと売れるんじゃないかと言い出してもっと作曲やプロデュース業に力を入れてくれと…私は今はLiGHtの事で頭がいっぱいだというのに…
本当にもっとまともに歌の勉強とかボイトレとかしておけば良かったかなと思うくらいには、なんとも恥ずかしいものである。
みんなレッスンを積んでいて上手い子ばかりだからなお更に…そんな子達に聴かれるお粗末な歌声…恥ずかしいったらありゃしない。
いや、私はこんな事が聞きたくてジフン名前を呼んだわけではなかったのだが…いざ言葉にしようとすると出来ないものだ…
「好きだよ」って伝えたかっただけなのに…。
そろそろ電話の時間も終わりかな?
そんなに話した感じがしていなかったが…もう時計を見ると3時近くで、もう1時間ほど喋っていた。
ジフンとの時間はやっぱりあっという間だ。
私が間違えて日本語で「大好き」と言おうとしてしまったのが分かったのか、少し笑われてしまったのが恥ずかしかったが、まさかジフンに日本語で「愛してる」なんて言われるとは思ってもいなかった。
これが外国との違いなのだろうか…何はともあれ、流石男前のジフンらしい回答だった。
私にとっては、そんな言葉も凄く嬉しくてたまらなかった。
久々に話せて本当に嬉しかったなぁ…「愛してる」か…これ程にも嬉しい言葉はないだろう。
本当に今自分は幸せだなと思った。
ジフンに久々に会えたらなんて言おうかな…
そんな事を考えながら私は瞼を閉じた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。