第38話

声を聴かせて?
540
2020/06/22 17:01
1日過ぎ去るのがあっという間すぎて、また次の日からも音楽番組の収録やバラエティ番組の収録、ラジオに雑誌撮影にと目まぐるしい毎日だった。

これまでにないくらい忙しい。
けれど、メンバーは若いからかそんな疲れも一切見せず、毎回いいパフォーマンスをしてくれている。

かくいう私も今のこの状況が楽しくて仕方ない。
体力的には結構しんどいのだが、みんなの為ならと頑張れている。

今日もまた色んなスケジュールをこなして、ホテルのベッドに倒れ込んでいる所だった。
あなた

はぁ…今ジフンに電話したら迷惑かな…

日本に来てから定期的には連絡しているが、そんなに毎日ってほど連絡は取っていなかった。
実際そんな余裕が無いくらいに忙しいというのが本音だが、ジフンもジフンで忙しいだろうし…と思うとなかなか連絡しずらいというのもあった。

だが、今日は何だかジフンの声が聴きたい。

私はまずカトクを送ってみる事にした。
「ジフン起きてる?」とシンプルに、そうするとすぐに既読になった。
ウジ
ウジ
起きてるよ
あなた

電話、してもいい?

ウジ
ウジ
いいよ
すんなり良いよと貰えて嬉しくなった。
私は寝転んでいた体を起こし、なんとなくベッドの上で正座する。

なんだかんだこうやって日本に来て電話をするのは初めてだからか、なんかちょっと緊張する。

スマホを操作し発信ボタンを押す。
プルルルルと待機音が鳴り、2コールくらいで待機音が止んだ。
あなた

よ、ヨボセヨ?

ウジ
ウジ
あーヨボセヨ
ジフンだ…ジフンの声だと何故か分からないが妙な安心感を抱いた。
あなた

遅くにごめんね?寝ることろだった?

ウジ
ウジ
いや?今練習終わって帰ってるところだよ
あなた

今?今、深夜の2時前なんだけど…遅くまでやってたんだね?お疲れ様。

ウジ
ウジ
まぁ普通だけどね、あなたは?
あなた

今日も今日でスケジュールいっぱいでご飯を食べる時間がなかった(笑)

ウジ
ウジ
ダメだよ。ご飯はちゃんと食べないと!
ほんとすぐあなたは忙しいってご飯食べないの良くない。ご飯食べないと何も出来ないし、ちゃんと食べろよ?
あなた

はい…気をつけます。
(いつもジフンが食べすぎなだけな気もするけど)

ウジ
ウジ
でもまぁ…あなたもお疲れ様。
まさかイベントの司会までやってるとは思わなかったよ(笑)
あなた

いや、あれはね?仕方なかったの、本当は外部の会社に頼む予定だったんだけど行き違いがあったみたいで、うまく手配出来てなかったんだよね…

ウジ
ウジ
それは大変だったね…
でもうまく喋れてたよ?すっかり人気者なんじゃない?
あなた

それが、あの後ハイタッチ会もあったんだけど…メンバーの隣で監視役として居たら、ファンの子たちが私ともハイタッチがしたいって言ってきた子が居てさ(笑)
その流れで最後なぜか私ともハイタッチをするっていう謎状態になっててその後TwitterとかのSNSが荒れ放題!もう本当に大変だったんだから…!

ウジ
ウジ
そういえば…まとめサイトみたいなのにも上がってたよ?「LiGHtの美人プロデューサー!突然のハイタッチも笑顔で対応!」って…
俺らそれ見て爆笑してたよ!絶対SEVENTEENの握手会やサイン会にも出てもらおうって(笑)
あなた

いや、出ないからね?(笑)
私はメンバーじゃないし、需要なさすぎだし、私はただのプロデューサーだってば!ほんと、それくらい認知してもらえてるっていうのは有難いことなんだけどさ…

本当に大変だったのだ…
プレディス側もうちの会社側も私の名前を売ったらもっと売れるんじゃないかと言い出してもっと作曲やプロデュース業に力を入れてくれと…私は今はLiGHtの事で頭がいっぱいだというのに…
ウジ
ウジ
それ見て俺らの担当の人、面白いこと思いついたって何か企んでたから覚悟しておいた方がいいと思うよ
あなた

えぇ…まだ日本語の歌詞作りも1曲残ってるのに?

ウジ
ウジ
俺はちょっと概要聞いたけど、あなたには韓国戻ってきてから話すって言ってたから…
あなた

えっ…なにめちゃくちゃ気になるじゃない…どんな話なの?

ウジ
ウジ
俺からは教えられないよ(笑)
口止めされてるし…!とりあえず仕事の話だよ。
あなた

えーー気になるなぁ…でも次の仕事が決まったようなものよね…楽しみにしてる!

ウジ
ウジ
あ、そうだ、後…この間録ったデモ、メンバーに聴かせたら大好評だったよ。このままCDにしたいくらいだって…!社長も絶賛してた。
あなた

しゃ、社長!?プレディスの?

ウジ
ウジ
うん。たまたま事務所来てたみたいで、普段スタジオ来たりしないんだけどなんか来て、その時にちょうど皆でデモ聴いてたから…
あなた

なんと…メンバーに聴かれるってだけでも恥ずかしいのに…

本当にもっとまともに歌の勉強とかボイトレとかしておけば良かったかなと思うくらいには、なんとも恥ずかしいものである。
みんなレッスンを積んでいて上手い子ばかりだからなお更に…そんな子達に聴かれるお粗末な歌声…恥ずかしいったらありゃしない。
あなた

ねぇ…ジフン?

ウジ
ウジ
ん?
あなた

あー………お土産何がいい?

いや、私はこんな事が聞きたくてジフン名前を呼んだわけではなかったのだが…いざ言葉にしようとすると出来ないものだ…
「好きだよ」って伝えたかっただけなのに…。
ウジ
ウジ
なんでもいい。食べ物がいいけど
あなた

分かった(笑)
日持ちしそうな食べ物買って帰るね!

そろそろ電話の時間も終わりかな?
そんなに話した感じがしていなかったが…もう時計を見ると3時近くで、もう1時間ほど喋っていた。
ジフンとの時間はやっぱりあっという間だ。
あなた

…ジフン、ありがとうね。
声が聞けて嬉しかった!元気でたよ。

ウジ
ウジ
そう?なら良かった。
無理すんなよ、いつでも電話の相手くらいならなってやるから
あなた

ありがとう。本当にありがとう!
だいす……じゃない、サ…

ウジ
ウジ
ダイ?…サ?
あなた

あのその……サランへ!

ウジ
ウジ
あー(笑)
俺もだよ。あなた、アイシテル。
あなた

…!!?

私が間違えて日本語で「大好き」と言おうとしてしまったのが分かったのか、少し笑われてしまったのが恥ずかしかったが、まさかジフンに日本語で「愛してる」なんて言われるとは思ってもいなかった。

あなた

ジフンは…さすがだね…そういうのは恥ずかしくないの…?
愛嬌は恥ずかしがるのに…愛してるなんて普通に言える言葉じゃないよ?

ウジ
ウジ
なんで?あなたへの気持ちを表すだけなのに、何も恥ずかしいことなんてないけど…
あと韓国では結構普通にサランへーって言うから抵抗はないかな。
これが外国との違いなのだろうか…何はともあれ、流石男前のジフンらしい回答だった。
私にとっては、そんな言葉も凄く嬉しくてたまらなかった。
ウジ
ウジ
そろそろ寝なよ。明日も早いでしょ?
あなた

うん。そうだね…またジフンの声が聴かせてね?あともう少ししたら戻るから、その時はお土産話いっぱいしてあげるから聞いてね!(笑)

ウジ
ウジ
ん。分かったよ
あなた

おやすみ、ジフン

ウジ
ウジ
おやすみ、あなた
久々に話せて本当に嬉しかったなぁ…「愛してる」か…これ程にも嬉しい言葉はないだろう。
本当に今自分は幸せだなと思った。

ジフンに久々に会えたらなんて言おうかな…
そんな事を考えながら私は瞼を閉じた。

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