メンバーみんなが完全に面白がっている。
今朝はあなたに起こされ朝からびっくりしすぎてクラクラした。
作業部屋に入っていつものように作業を進めていたが、どこかでやっぱり彼女の事を考えており、気分を変えて違う曲を作り始めてしまう始末だった。
俺の今の心情は、 아낀다の詞に近かった。もうこの曲をこのまま彼女の前で歌っても良いかもしれない。
本当にまいったな…いつも歌詞は簡単に書けるけど当事者になった途端に苦しくて死にそうだ。
パソコンに向かってメロディーを打ち込んでいたが、手を止めてソファーに寝転んだ
その時ガチャっと扉が開く音がした。
昨日に引き続き大して作業は進まなかったが、ウォヌと一緒に俺は宿舎に戻ることにした。
*****
宿舎に戻り玄関に入ったときだった、リビングから声が聞こえる。
良く聞いてみると歌を歌っているようだった。
歌声の主はあなたで、口ずさんでいるメロディーは聞き覚えのある曲だった。
このメロディーライン…「Simple」だ。
歌詞は韓国語ではなく、日本語で歌っているようだった。
あなたは上機嫌にキッチンに向かっており、俺らが帰ってきていることに気づいていないようだった。
サビを歌い終えて、料理の作業も一区切りついたのか彼女が俺らの方に振り返った。
そう言ってあなたは顔を真っ赤にする。
ちょうどウォヌの後ろにいたからか、俺も帰ってきていることにまだ気づいていないようだった。
気まずそうにあなたは、はははっ…と笑っている。
日本語の詞の意味は調べないとわからないが、あなたは歌も上手かった。
音楽センスがあり、作詞作曲が出来て、見た目も綺麗で、性格も良くて…?
強いて言うのであれば背が小さいところがあれかもしれないが、俺もそれは人の事は言えないし十分アーティストとしてもやっていけるのではないか?と思うくらい才能がある人なんだなと思った。
メンバーがゾロゾロと戻ってきた。
あっという間にリビングが埋まっていく。
メンバー全員が揃いに揃ってリビングはすっかり狭くなってしまった。
あなたは次々にキッチンからリビングへ料理を運んでくる。
あなたの作ってくれたトンカツや味噌汁は美味しくて、13人全員で食べると結構な量が会ったのに一瞬でなくなってしまった。
幸せだな…そう感じながら、もくもくと箸を進めていく。
騒がしく楽しい時間はこの日を境にどんどんと増えていき、今まで以上にメンバーの仲も良くなった。
気づいたら俺たちにとってあなたはとても大事な存在で、一緒にいて当然。もう居なくては困る人になっていた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!