第15話

突然の連絡と怒りと悲しみ
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2020/06/01 05:38
ホシくん、スングァンくん、ドギョムくん、ウジくんに連れられて、私はシゴルパッサンという韓定食店に来た。

皆が頼んでくれた料理はどれも美味しくてお箸が止まらない。
次はどれを食べようかと悩んでいる時だった。

プルルルルル…

私の携帯から着信音が聞こえた。
スマホのディスプレイを見ると愛華からの着信だった。

そういえば、韓国についたら愛華に連絡するって言って出来ていなかったな…。
すっかり忘れてしまっていた。
あなた

ごめん、会社の同僚から電話だわ…
ちょっと出てくるね!

ホシ
ホシ
いってらっしゃい~~~!
私はお店の外に出て、電話を取った。
神木 愛華(同期)
神木 愛華(同期)
ちょっとーーー!!!!あなた??
何で連絡よこさないのよ!!!
あなた

ご、ごめん(笑)ちょっと韓国着いた初日から色々事件があってさ…

神木 愛華(同期)
神木 愛華(同期)
あぁ…階段から落ちて気絶したんだっけ?大丈夫だったの?
あなた

なんとか大丈夫だった…気づいたら病院だったからびっくりしたんだけどね。
それより何かあった?急に連絡してきて…

神木 愛華(同期)
神木 愛華(同期)
良くない報告よ…
今週末にあなたがプロデュースしてたグループがデビューするのは知ってるよね?
あなた

ああ、うん。
韓国来る前にデビュー日は聞いてる。

神木 愛華(同期)
神木 愛華(同期)
そのデビュー曲なんだけど…あなたが作った曲になったのよ
あなた

え…??いや、それはおかしくない?
部長も課長もお前が作った曲は使わないって言ってたよ!?デビュー曲は名のある作家さんに書いてもらうからって!!

そもそもプロジェクトを外される前から、部長にはお前の楽曲選定センスがないだの、俺ならこのグループにこんな曲歌わせないだのなんだのめちゃくちゃに言われていた。

私が作った曲はメンバーの子たちには大好評で、自分で言うのもなんだが、このグループの良いところが引き出せる最高の楽曲だと思っていた。いわゆる自信作だったのだ・・・。

ただ、上司に指摘されて逆らう事は出来ない。
今回の戦略的に合わなかったのだろう・・・そう言い聞かせていたのに。

今更私が作った曲でデビューするってどういう事なの!?使わせてもらうよの一言ももらってない!
心の底から腹が立って仕方なかった。
あなた

あり得ない…あんなに、否定された曲だったのに。だめだ、めちゃくちゃ腹が立つ。

神木 愛華(同期)
神木 愛華(同期)
ほんと、私もこのプロジェクトに関わりないからサンプル上がってくるまで知らなかったんだけど…
聴いたときほんとにビックリしたわよ…これ、あなたが作った曲じゃんって。
あなた

どうせ、クレジットに名前の一つだって載りやしないんでしょう?
部長はいいとこ取りしたってわけね。

メンバーの子たちが気に入ってくれていた曲だ。
その曲でデビューしてくれるという嬉しさが込み上げるのと同時に、部長が私の努力全てを踏みにじっていった事を知って、腹が立って、むかついて、憎くかった。

また自分自身がもっとあの子たちの為に上司に認めてもらえるような仕事が出来ていたらこんな気持ちにもならず、プロジェクトを外されることもなかったのだろうか…。
あなた

あーもう…!クソ腹立つーーー!!

ムカつきすぎて、情けなさすぎて気づいた時には泣いてしまっていた。
神木 愛華(同期)
神木 愛華(同期)
あなた…。
あなた

なんで?なんで私プロジェクト外されたの?
私あの子達の為に必死で仕事してきたつもりだったのに、何も出来てなかった…?
何が正しかったの?なんで私が作った曲でデビューするの?もうわけわからない…私韓国まできて何してるの?

神木 愛華(同期)
神木 愛華(同期)
ねぇ、あなた…。今任されてるプロジェクト。絶対成功させてよね。
私としても常々あの部長には腹立ててるから。
何か手伝える事あったすぐ言って!私は名前の味方だし、絶対あなたに早く上に行ってほしい。
あなた

愛華…ありがとう…。
こんな所で挫けてたら先がないよね…頑張るよ!!

神木 愛華(同期)
神木 愛華(同期)
その意気だよ!
じゃ、またね。おやすみ!
あなた

うん。おやすみ

頑張るとは言ったものの…気持ちは落ち込む一方だった。あの時こうしてればとかあの時違う判断をしていたらなんてタラレバばかり考えてしまう。

でもだめだ、上を向かないと。
泣いてる暇なんてないんだから。

私は涙を拭い、お店に戻った。
あなた

ごめんー!ちょっと電話長引いちゃった。

スングァン
スングァン
あれ…あなたヌナ…なにかあったの?
目真っ赤だけど…
あなた

あぁ…さっき目にゴミ入っちゃったみたいで、コンタクトしてるから痛くてさぁー…涙止まらなかったよ(笑)

ウジ
ウジ
………
苦しい言い訳だったかもしれないが、今のこのぐちゃぐちゃした感情は皆にぶつけることは出来なかった。

彼らは真っ直ぐにひたすらに夢を追ってる綺麗な子達だ。こんな汚い感情なんて見せたくなかった。
ドギョム
ドギョム
……さ!これ食べなよー!冷めちゃうよ!
あなた

ありがとう!ドギョムくん!
ここのお店ほんとどれも美味しいね…!

私が無理して笑っていることが、皆に気づかれているのは分かっていた。
でも私には余裕が全然なくて、ただ美味しいねとご飯を食べる事しか出来なかった。

その後はそのまま宿舎に戻り、今日は仕事をしたいからみんなの睡眠の邪魔にならないようにリビングを使わせてくれとお願いした。

なので私は今1人でリビングにいる。
手元にはどうしても持ってきてしまった、今度デビュー曲として世に流れる楽曲の楽譜を置いている。
あなた

出来ることなら私の手で作り上げて、世に出したかったな…

でもここまで来たら、吹っ切れるしかない。もうデビューまで3日だ・・・今更何を言おうとこの曲でデビューしてしまう事には変わりない。

部長には負けない。負けたくない。
このグループに負けないくらい売れる、推せるグループを作ってみせる。

残念ながら私は諦めも悪いし、売られた喧嘩は買うタイプだ。かわいらしくめそめそ泣いて黙っているタチではない。
あなた

今私にできることをやろう。

その夜私はひたすらに曲を作り続けた。
ただただひたすらに。
ただただがむしゃらに。

作業に没頭した。

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