めめの見せてくれた写真には、めめとあなたの名字さんが映っていた。
それは、愛しそうに彼女を抱きしめる、めめの姿だった。
佐久間も、照も。
ラウールに、めめまで。
こんなにもみんなを惹き付ける彼女はどんな人なんだろう。
好奇心は、無意識のうちに膨らんでいくものなのだと、今更ながら自覚する。
手元の写真をじっと見つめる俺に、今度はめめが問いかける。
差し出された写真には、めめの腕の中で、祈るように瞳を閉じる彼女の姿。
光のさじ加減なのか、2人を光が包んでいるように見える。
そう口にするめめの表情は、やはりいつになく穏やかで・・・。
予期せぬ発言だった。
『探していた』・・・だなんて。
言葉の真意までは読み取れないけど。
ただ、俺が目にした、めめの幸せそうな表情が、大切なものを見つけた時の子供と同じ感覚を得たから出たものだった、と・・・そんな気がした。
そのせいか、次の瞬間の俺の言葉は、躊躇(ちゅうちょ)すること無く、口を割って飛び出した。
ポーカーフェイスが得意なめめが、ふいに見せた照れた表情は、肯定を意味している・・・そう思った。
そんなやり取りがあったその日。
レコーディングを終えた俺は、舘様と居た。
一緒に歩きはじめて、何となく行先に検討がついて、問いかける。
誰にも教えていない、と話していたその場所は、舘様にとって大切な場所のはずなのに・・・。
そこに俺を再び連れて行ってくれることに、驚きと申し訳なさでいっぱいになる。
舘様らしい返答に笑ってしまった。
すると、店の近くまで来て、見覚えのある人影が視界に飛び込んできた。
それは先程まで一緒にいた人物で、俺たちに気がつくと右手を上げた。
照と合流して、3人で進む道のりは、昔を思い出すには丁度よくて・・・。
無意識に始めた思い出話に、笑いあった。
店の前に着くと、舘様は1人店内へと入って行った。
少しして、戻ってくると、俺たちは中へと足を踏み入れる。
舘様に導かれるように通されたテーブルに行くと、先約者が顔をあげたのだった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。