辰哉 side
舞台稽古が始まって1ヶ月が経った頃。
季節は春目前になっていた。
稽古場に向かう途中にも桜があちこちに咲き誇っている。
今日はいつもより早めに目が覚めて、時間を持て余してしまった俺は、だいぶ余裕を持って家を出た。
コンビニでカフェラテを買って、稽古場へと歩いている途中で、あまりの桜の綺麗さに足を止めた。
上を見上げている俺のもとにふいに声が降ってきた。
そんな会話をしながら、稽古場へと歩き出す。
照とゆっくり話すのは半月ぶりくらいになる。
テレビやら、雑誌やら、顔を合わせていてもなかなか時間が取れなかったのが現実だった。
当たり前のように話す照に、ふと思ったことを聞いてみる。
この話の流れから、俺は稽古後、照と彼女と3人で夕飯を食べることになる。
胸の内に変な緊張感を残して、俺はその日1日を過ごしたのだった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。