向かい合わせに座り、阿部が紹介するというメニューを頼む。
阿部がキョロキョロと忙しなく店内を見回している。
らしくない・・・緊張があからさまだ。
そんな会話を繰り返してる間に、目の前には食事が並ぶ。
食事を食べながら、不意に顔を上げた俺は、窓際の女性が目に止まった。
箸を進めながら、記憶の糸を手繰り寄せる。
横顔しかわからないけど・・・。
違う・・・かな?
阿部が食べながらメモを取っている中、俺は食べ進めながら、そっと横目で彼女の様子を伺っていた。
あの雰囲気、やっぱり前にもあの場所に居た子だと思う。
確信が持てないまま、箸を置くと、彼女が立ち上がり、一瞬髪に隠れた表情が俺の視界に飛び込んできた。
昼間の疑問が解けた瞬間、
彼女はカバンを肩にかけ、そのまま店を出て行ったのだった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。