亮平 side
レコーディングを終えて、俺と照、舘様はみんなの居る会議室へと戻った。
3人を送り出し、俺たちは椅子へと腰を下ろした。
佐久間の携帯から流れてくる音楽は俺たちの楽曲で、一度聴いている、佐久間・ふっか・翔太はリズムをとりながら聴いていた。
そして、舘様は目を閉じて、照は腕を組みながら何かを考えているようだった。
心地よい歌声はすんなりと耳に入ってくる。
それはきっと誰もが同じ感覚だったのか、歌が終わるまで誰も口を開かなかった。
曲が終わって、口火を切ったのは舘様だった。
明らかに表情が変わったのは、照だった。
けれど、そのことに触れる人がいなかったので、俺もあえてスルーして見せた。
翔太は佐久間の言葉に相槌をうつと「ふ〜ん」と視線を遠くへと向けた。
そんな佐久間をよそに、俺の目には微かな違和感だけが写って見えた。
照はともかく、舘様も、翔太まで。
彼女に何があるっていうんだろう。
消化出来ない気持ちが表に出そうになった時、ふいに、肩を叩かれた。
ふっかに続いて、部屋を出ると、自販機の場所へと向かう。
隣に並ぶと、ふっかは口を開いた。
慌てて、眉間を擦る俺に、ふっかはにこっと笑う。
ガシャンと自販機で水を買いながら、ふっかは問いかけた。
ふっかは、自販機横のベンチに腰をかけると、俺を見上げて小さく息を吐いた。
ふっかの隣に腰を下ろして、俺も小さく息を吐いた。
ふっかは、ペットボトルを握りしめながら、呟いた。
ふっかの言葉は、知らぬ間に卑屈になっていた俺の心にすーっと落ちた。
不敵な笑みに驚いた俺に、ふっかは笑って言った。
2人で笑いあっていると、目の前にふいにチャンスが降ってくるのだった。
知りたかったことを確かめる為の・・・。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!