【胸キュンボイスー宮舘編】
学校帰り、立ち寄った近所のスーパー。
季節がら、バレンタインのコーナーが設けられていた。
カートを押しながら店内を進んでいくと、見知った顔が真剣な顔で、菓子の材料を見ていた。
彼女の前に並ぶ材料を手に取り、こう口にする。
誰に・・・とまでは聞けなかった。
知ってるやつの名前が出てきたら、一気にテンションが下がるから。
極力、気にしてない素振りで尋ねた。
一気に機嫌が悪くなる彼女。
泣きそうな顔で俺の背中を叩こうとする彼女の手を寸前で掴み、俺はこう告げた。
その言葉に肩を落としたのが分かった。
落胆する姿がやけに痛々しくて、このまま放っておけなくなって・・・。
俺は、彼女をよそにチョコレートケーキの材料を選び始めた。
彼女は俺の手から材料を取り上げようと試みる。
そこまで、嫌がらなくても・・・。
俺が手伝ったことが好きなやつにバレたら困る・・・とでも思ってるんだろうか?
好きなやつって、俺の知ってるやつ?
思わず言葉を失っていた俺は、彼女の問いかけで現実に引き戻された。
俺から材料を取り上げると、自分のカゴに入れて俺に背を向ける。
俺は寸前で彼女の腕を引いた。
相手がどうあれ、やっぱりこのまま別れるのは、俺自身納得できない。
美味しいケーキをプレゼントして、好きな奴と上手くいって欲しい気持ちと。
失敗して、落ち込む彼女を俺が慰めてあげる状況を願う気持ちと。
気持ちの狭間で揺れてはいたものの、彼女の笑顔が見たい一心で、前者を取った。
俺の押しに負けた彼女と2人、家までの距離を歩く。
ずっと胸の中にひっかかっていたことが思わず出てしまった。
足を止めた彼女の前に立ち、そっと彼女の腕に手を伸ばす。
いつも、俺と翔太の後を追ってきていた可愛い幼馴染が、顔を赤くして恥ずかしそうに…。
俺だけにそう言ってくれる。
それが、何となくくすぐったくて、小さく笑みをこぼした。
そして、次の瞬間、俺は優しく抱きしめた。
そっとおでこにキスを落とし、こうお願いしたのだった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。