平日の20時。
駐車場には、俺の車しか停まっていない。
外に出るには風が冷たい気がするし、な。
選択を間違ったかな?
…とはいえ、カラオケじゃゆっくり出来ないし。
助手席を見れば彼女は静かに窓の外を眺めている。
か細い声が俺の名前を呼んだ。
肩を震わせながら、ゆっくりと言葉を紡ぐ。
あの時の様子を思い返しながら、耳を傾ける。
境遇が似てることが更に胸を締め付ける。
彼女の発する言葉の節々から、抱えているものの重さを痛感する。
カフェオレの缶を握りしめながら、苦笑いをする彼女には、落胆の色も見えた。
俺は顔も見ずに、助手席の彼女の頭をただゆっくりと撫でた。
俺の言葉を笑って受け流す君は、先程とは違って明るい表情をしていた。
彼女の言葉を俺は静かに聞いていた。
ようやく2人で笑いあった時には、月もいい具合に高くなっていた。
時計の針は、もうすぐ、21時になる。
月が綺麗に見えるくらいに空気が澄んでるせいか、やっぱりさむい(((゚〰゚)))
上着を羽織ってはいても、冷たい風が身体を冷やしていく。
車に乗り、再び帰路につき、彼女の家の場所を尋ねると、意外にも俺の家の近くで。
少しだけお互いが打ち解けた俺たちは、行きよりも会話が弾み、あっという間に彼女の家の前に着いたのだった。
彼女の話を聞いて、そして、涙を見てから。
目の前でコロコロと変わる彼女の表情に胸が疼くのが分かる。
そして、車を降りようとする彼女に俺は真剣な眼差しでこう告げた。
俺の、今の精一杯だった。
ただ独りにしたくなかったんだと思う。
しばらくして俺の言葉に笑顔を見せた彼女は、はにかんだ顔で答えた。
そのやり取りの後、俺たちは連絡先を交換して別れた。
独りになった車の中で、思い返すのは彼女の笑顔で…。
気がつけば、彼女がずっと伏せてきた思いを呼び起こしてしまった事への罪悪感が、少しずつ薄れてきていることが自分自身不思議で仕方なかった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。