第12話

練習生(12)
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2020/03/19 09:14 更新
久しぶりに会えたヒョンは、


いつもより、心なしか優しくて。


「先輩と話してどうだった」


「うん。


めっちゃ手汗が出た。」


「それだけ⁉」


「ふふふ」


「きもいぞ」


「はぁ?


今日は優しいなと思ったのに。」


「うそうそ。


あなたは可愛いから」


「嘘っぽ」


「褒めてんだからいじけるなよ」


そう言ってヒョンは笑った。


その時練習室の扉が開いた。


「あなたいるか?」


振り返ると…


「社長‼」


ヒョンと私は急いで社長の近くへ行った。


「ちょっと話すことがある。


カンについてだ。」


「ヒョンですか?」


ヒョンを見ると少し苦しそうだった。


苦しい内容なの?


せっかく今幸せなのに。


「カンは出ていてくれ」


そう言われてヒョンは部屋を出ていった。


「社長、ヒョンがどうかしたんですか」


「カンは今月で事務所を出て行く。


実家の家業を継ぐそうだ。」


「え…


私そんなこと聞いてません。


もうあと一週間しかないじゃないですか」


「もうカンが決めたことだ。


ちゃんと送り出してやってくれ」


社長は仕事があると言って部屋を出ていった。


かわりにヒョンが…


悲しい顔をしたヒョンが入ってきた。


「ヒョン…」


「ごめんな」


ヒョンは笑ってた。


ヒョンの目は潤んでた。


必死に何かを1人で抱え込んでるみたい。


「なんで話してくれなかったの?


私、そんなに頼りないかな?


今までずっと一緒にやってきたじゃん!」


「あなたはもうデビューするんだ。


だから、俺のことは気にしなくていいから」


「さっき、デビューしてからも会えるって言ってたよね。


なんで嘘つくの?


離れたら会えるかなんてわかんないんだよ」


ヒョンの実家は済州にある。


家業を継ぐんだから、ヒョンはこれから農家になる。


農家はきっと忙しい。


ヒョンの実家は規模も大きいし。


私もこれから仕事ってなると自由に外出できる時間も限られてくるんだ。


なのに…


タイミングが悪すぎるよ。


次々まわりが変わっていく。


1人だけ今に取り残されてるみたい。


「寂しい…」


不意に出てしまった。


ヒョンは悲しい顔をする。


またヒョンにそんな顔させてしまった。


「もともと決まってたんだ。


あなたがデビューするまでって話で。」


ヒョンは変なことを言い出した。


決まってたって何。

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