数分が経ち倉田は玄関に戻ってくる
まさか着替えてるなんて思わないじゃん
私は再びあの光景を思い出し赤くなる
そう言い玄関を開けて塾へ向かう
隣に歩く倉田に突然質問してみた
認めたわけではないけれど少し気になる
そこから仲良くなっていったって感じか
私がそう言うと倉田は黙ったまま視線を下に向けた
やばい、今のは無神経だったかも
いつの間にか駅前に着いていた
頷くと倉田はそのまま改札を通りホームに向かっていく
どうしよう酷いこと言ったままだ
倉田暗い顔してた
塾どのくらいかかるだろう
このまま帰ったらずっと謝れない気がするから
.
それから随分長いこと待った
時計を見ると10時に刺しかかろうとしている
眠気が到来してきてあくびをしていると怖そうな警察官に話しかけらた
私は下を向き答える
やだ行きたくない
倉田まだ来てないのに
俯いたまま立ち上がれずにいると警察官はしゃがんで顔を覗いてきた
怖い
助けて倉田
聞き覚えのある声に私は顔を上げる
驚いた顔をした倉田と目が合う
そう言い警察が去った後冷たい空気が流れる
倉田怒ってるよね
私は座ったまま床の一点を見つめる
表情はわからないが淡々とした口調だった
声が震え力が入らない
倉田は少し離れ電話をかけにいった
なにやってんだろう私
謝るどころか余計怒らせてしまった
それから数分が経ち倉田は戻ってくる
立ち上がり倉田の後ろを歩く
先に歩いていてどんな顔をしているのかわからない
だけど謝らないと
私は勇気を振り絞り声をかける
動いていた倉田の足が止まり、こちらを振り向く
頭を下げ今度は震えずに伝えられた
予想外の返答に私は顔を上げる
楽しかったって
私がそう言うと倉田は思い出したような素振りをした
そうだったんだ
てっきり傷ついてるのかと思っていた
そんなにお姉ちゃんのこと思ってるんだ
その瞬間心臓の奥がズキンと誰かに握られたみたいな痛さに襲われた
なんだろうこの胸の痛み
私はコンビニを指さし紛らわす
あんまり考えすぎないようにしよう
まだ倉田のこと認めたわけじゃないけど少しはお姉ちゃんの彼氏っていうの認めてやってもいいかな
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!