あれから数分
私は彼の後ろをただただ着いていく
沈黙が続いていて何を話したらいいのかわからない
私が声をかけると立ち止まり振り向いた
昨日はあんなに嫌そうにしていたのに
まさか来てくれるなんて思いもしなかった
そんな顔していたんだ
自分では気づかなかった
一見ぶっきらぼうそうに見えるけれど本当は優しいやつなのかも
やっぱりさっきの言葉は前言撤回だ
あれ、そういえば
心にあったモヤモヤがいつの間にか消えていた
私は立ち止まり自分の胸に手を当てる
今なんとも思っていない
そっか私前に進めたんだ
先に歩いている彼の方へ私は急いで後を追った
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!