その瞬間、とある女子小学生は不満の声をもらし、慌てて口を抑えて耳を澄ませた。中学受験を控え、勉強をしていると両親は思い込んでいるのだ。隠れて動画を見ていたなんて、バレたらスマホを取り上げかねられない。
親からのリアクションがないことを確認すると、彼女はほっと息を吐き出した。
最近クラスで話題の"スパイダー"、ロコ。幽霊動画をきっかけにチャンネル登録して以来、新しい動画が投稿されるたびにチェックしている。
今日は簡単なおまじないを教えてくれると予告していたから楽しみにしていたのにガッカリだ。だいたい"呪い返し"なんて、使う機会なんてないじゃん。
女子小学生はギクリとして、スマホを凝視した。小さな画面の中のロコと目が合った気がして、今度はゾクリとした。
ロコは不思議な少女だ。見た目はそんなに可愛くないし、格好はいつもジャージで髪も適当に二つにしばっただけ。はっきり言ってダサイ。でも"いかにも"な格好をしていないあたり、本物っぽい雰囲気がある。テレビに出ている自称陰陽師や自称オカルト少女なんて、衣装からして怪しいし。ロコの飾らない格好は、逆に信憑性があった。
ちょっと前にクラスで話題になった"呪いのアプリ"が頭に浮かんだ。友達が面白がってダウンロードしていたけど、全然効かなかったと言っていたのを思い出した。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。