列車に揺られること10分程度。
あれだけ楽しげでほんわりとしていた車両は、一人一人の寝息で包まれていた。...
私、御巫 あなたを除いて。
『(そろそろ仕掛けてくる頃...あの切符に絶対何かあったな、、ごめん煉獄さんと炭治郎さん。)』
隣には窓に寄りかかる炭治郎さん、そして前には煉獄さん。
目を閉じて寝たフリをしている状態だが、集中力を高め 人それぞれの気配を正確に捉えられている。
勿論なぜ全員が眠らされているのかも分かるが、変に動いたら奴に目をつけられるだけだろう。
『(っていうか注意深すぎか。切符を切られない事も考えてる...)』
私の行動も把握済みか、なんて考えていた矢先。
またしても、ツンっとした嫌いな臭いが鼻から体内に入り込んできた。
─────ガッっ
「っ...っくっ!!!」
『...』
「な、なんで...眠ってないわけ!!?」
炭治郎さんや煉獄さんを結んだ気配が、小さな声で数を数えはじめ、自分の手首にも縄が回される。鬼の手下であろう者が〝良い夢を、みるため...〟と呟き 目をつぶったのを確認すれば、勢いに任せ腕に力を込め鋭く睨みつける。
編んである髪がバサリと音を立て、女の子の背中に当たった。縄をつかみ此方に引き寄せ、異臭を放っている錐が握られた手を掴む。
『...この鍛錬に鍛錬を積まれたお方の手の方が良かったのか。この骨では簡単に折れてしまうだろうな、君の相手は私で十分だ。』
「な、なんなのッ!?...離しないさいよ!!!」
『此方に危害を加えようとした者に指図される筋合いは無い。』
荒い言葉をぶつけられる。私に向けられる目は、焦りと恐怖の塊だ。
動揺を隠そうとしない彼女に詰め寄る。
と、ふとその脚を止めた。
、、、この目、鼻、口の顔のパーツと着物.....
『....不死川殿との女人か。久しいな』
「はっ、あ??...っ、あ!!!アンタはあの時の....
....ふん!何よその男口調、図々しい態度。あの方とはやっぱり不釣り合いね」
『宜しい、まだ口は回るようだな。何を思い違っているのか知らないが、その話は後で聞く。
、、、汝達の心にそこまで漬け込んだ モノ は何処に居る??』
理解し難い話を続ける身体を押し込み淡々とした言葉で返す。どうにか抵抗しようと試みて、ググッと骨が軋む度彼女は声を上げて 私に睨みを利かした。
『(...時間が無い)』
既に手荒な真似をしてしまっているが、何度も問い詰めてみても舌を鳴らし口を割ろうとしないし、どうしたものかと考えを巡らせていた時。
ポタリ...と静かに床へ何かが落ちた音がした
『炭治郎、さん?』
炭「っ...。」
『....狙いは、〝精神の核〟という モノ か。
どうやら、彼奴の血を多く貰えた逸材のようだ』
「何、ブツブツ言って.....っぁ?!」
『命の保証はする、思ったより手こずりそうだが』
チョップ、なんて言われるのを軽めに受けると、彼女はプツリ音が鳴るように意識を手放した。
この人に、.....“幸せな夢をみたい”と思わせてしまったのは...私のせいだろうか。
空いた席に横たわらせ目を伏せる。間違った言動、行動をしてしまったことを謝罪したとしても、きっと許されない。掌へと爪を力いっぱい食い込ませる。
後悔なんて慣れてしまって良いものなのか───。
答えなんて血気術をかけられた車両からは誰からも返されるはずがなく、ズラしていた面を顔にかぶった。
【コソコソ大正噂話☆偽】
今の炎柱について
霊柱が既に鬼について気付いているので、眠りに落ちても精神の核に触れさせることなく夢を見続けています。
なので、あのお下げの女の子も炎の中彷徨い続けているということです。炎柱同様苦しんだ表情でいます
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。