2人のヒョンに教わった
ここで気をつけるべきこと
必ず主人の言うことは聞くこと、泣かないこと、抵抗しないこと
この3つを守っていれば「殺されること」は無いらしい
ジェノヒョンが僕に寄り添って話をしてくれる
ジェミニヒョンは、どこかに連れていかれてしまって、今は2人で帰りを待っている
「察して」ということだろう
ジェミニヒョンの髪色は、綺麗な銀髪
最初は黒髪だった
美しいと思ってたあの銀髪は、
耐え難い苦痛とストレスで髪が白くなっていただけだったのか…
そう気づいて身震いしていると
重い牢の扉が開いた
誰か連れていかれるのか…?
そう思って身構えていると
ジェミニヒョンが投げこまれた
ジェミニヒョンの体は、傷だらけだった
主に刺傷
投げ落ちた床に、点々と血が垂れている
ジェノヒョンがジェミニヒョンを抱き上げる
だらんと下がった手が鎖が釣り合い宙に浮いている
見開かれた真っ黒なジェミニヒョンの目から
ツーっと涙が伝った
こんなことが続けば、髪が白くなる訳だ
僕もこうなるのかな…
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牢に入ってきた人に、いきなり何も言われずに殴られた
僕達のことを人間だと思っていない
壁の隅っこに縮こまる僕を容赦なく殴り、蹴ってくる
その動作に意味などない
ただのストレス解消だろう
加えられる力がだんだん強くなる
これは…死んじゃうかも………
後どれだけ耐えればいいだろう
僕が死ぬのが先か、こいつが疲れて辞めるのが先なのか
痛みと恐怖の中そんなことを考えながら耐えていると、いきなり等間隔で続いていた振動が消えて
代わりにドスっと鈍い音が響いた
ハッと目を開けると、
ジェノヒョンとジェミニヒョンが壁に両手を着き、僕を庇うように覆いかぶさっていた
⚫️「何邪魔するんだてめえら!!!!!」
男は激昂すると、ヒョン達の背中に殴りかかる
ヒョン達は微笑む
が、衝撃が来る度にヒョンのその笑顔が苦痛に歪む
やめて、やめてよヒョン…
この前「抵抗しないこと」
って僕に教えてくれたじゃないか…
抵抗したらヒョン、殺されちゃうじゃないか…
結局、ヒョンは止めなかった
そのまま引きずられるように男に連れていかれ
帰ってきた時には重症だった
正直、殺されているかと思っていたから
僕達は僅かながらも生きていることに喜んだ
どんだけ狂った光景だっただろうか
そこからしばらくして、僕達はオークションに出品され
そのオークション会場を襲撃したイリチルのヒョンとあなたヒョン達に助けられた
業火の中助けられたが
その時はこの人たちが敵か味方かも分かるはずもなく
ずっと警戒を解くことが出来なかった
細身の、眼帯の青年がこちらに近づいてくる
僕が怯えたような声を出すと、ジェミニヒョンが僕を抱き締め
ジェノヒョンがその前に僕らを庇うように膝で立つ
青年はぴくっと動きを止めると驚きと悲しみが混ざったような表情をした
そこから少し考えたような表情をすると
自分の眼帯を取り、着ているジャケットの前ボタンを外し始めた
眼帯を外した青年の片目は、黒目の部分が青白く変色し
ジャケットから覗く白い肌には無数の痛々しい傷が刻まれていた
数秒、それを見せると
青年はサッと傷を隠してしまった
他人には見せたくなかっただろうに
僕達に早く安心して、
信頼してもらう為に一番合理的な方法として見せてくれた
その傷は、僕らが彼らを信頼するのに十分なものだった
ターコイズの宝石に、白い雲が混ざったようなその不思議な瞳に見つめられながら
その言葉を聞いた
「もう大丈夫」
それは僕達が数々の虐待を耐えている間
最も聞きたかった言葉だった
これが僕らがこの組織に来た初めての記憶
僕はハッと顔を上げると、ジェノヒョンとジェミニヒョンがニコニコ笑いながら立っている
その優しい笑顔に胸がキュッとなって、
僕は思わず2人に抱きつく
僕、この人たちや他のヒョン達の力になりたい
彼らが僕を助けてくれたみたいに
前にあなたヒョンが敵にやられそうになった時、牢で僕の代わりに殴られるヒョン達の姿と重なって心底恐ろしくなった
もっと強くならなきゃ、強くなって
今度は僕があなた達を助けます
ヒョンたちの胸の中で、僕はそう決意した
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。