車の運転席からジョンウがそう叫ぶ
ジョンウの視線の先には警官姿のジェヒョンがいた
夏の夕暮れの下、彼の周りにも警官隊が。
すごく忙しそうだ
ジェヒョンはそう返すと
仲間に一言二言告げると制服を脱ぎに戻り
戻ってきた頃には爽やかな私服姿で、仲間ににこやかに挨拶を交わすと
ジョンウが運転する車の助手席に乗り込んだ
ジョンウは車を走らせる
ここ最近ジェヒョンの勤務場所までの送り迎えをするようになったのだ。
途中で降りて、ジェヒョンにアイスを奢ってもらったりしながらNCTの本部に帰る
外国人組が帰国してから早一週間。
彼らが帰って以来、組織は異様に静かだ
彼ら、特に威神あたりがどれほどにうるさかったかが実感できる
騒がしくない建物の中は勉強や作業をするのに向いたような落ち着いた雰囲気が流れるが
やっぱり慣れないし、騒がしい方が好きだ
ロビーの窓辺で車椅子に座り、本を読んでいたテヨンが二人に気づくと
にこやかに迎え入れる
テヨンの右目には眼帯が巻かれていて、その下にはちらりと包帯も見える
彼の右目は完全に失明しまっていて二度と光を映すことはない。
でもテヨンは「左があるからいいよ」と笑っていて、とても前向きだった
「ただいま」二人はそう言うと
ダイニングテーブルに座る
外を見るとまだほのかに明るいものの時計はもう8時を回っているような8月の終わり頃。
そう言っていると、続々とダイニングにメンバーが集まってきた
今からみんなで晩ご飯を食べるのだ
外国人メンバーが帰ってから、韓国のメンバーも親元へ帰った。
久しぶりに会う親や家族に馴染めるか、ましてやわかってもらえるかなんて心配をしていたが
顔を見せた瞬間にすぐに気付いてもらえ、
家族全員で大号泣して迎え入れられた
長い間離れ離れだったのに、少しも気まずくならずに
昨日までずっと一緒にいたみたいに簡単に馴染めた
家族というものの力は強いもので、触れ合ってる時間はとても幸せで
時間も、今までの苦しかったこととかも全部忘れて
拐われた日から止まっていた時計が動き出したような感覚だった
その感覚は本当に慣れ親しんだもので
まるでNCTでの生活が夢だったのではと思うほどに夢中になった
その感情は外国に帰ったメンバーも同じだったようで
カトクのグループには同じような旨の内容で埋め尽くされた
そして一週間経った今日は、韓国人メンバーが全員久しぶりにNCTに帰ってきているのだ
今日の夕飯はテイルが作ったもの
その声を聞きつけてチソンとソンチャンが手助けに行く
机に続々と運び出される料理と、酒。
全員テーブルについてそれらを囲むと
テヨンの「乾杯」の声に合わせて食事が始まる
メンバーたちは楽しそうに談笑をしながら夕食をとる
テイルが作った料理はどれも美味しくて
一瞬で空になった
そのあとは軽くつまみを出して晩酌が始まる
ジョンウの自爆にみんな声を立てて笑う
テヨンは、グループに送られてきたメンバーの家族との笑顔の写真を見つめながら
嬉しそうに言う
これが自分たちの望んだ未来
地獄の中で夢見て焦がれ続けた景色
心はたくさんの戦いを経て強くなった
今ならトラウマに飲み込まれることはない
家族のもとに帰って、あとは幸せに暮らせればいい。
それだけ
あとは彼ら自身が望む人生を生きるだけ。
今まで縛られていた分、自由に
もう韓国に戻らずに、親の近くで暮らすものもいるだろう
それも自分たちの望み通りだが、
少しばかり、いや
とても寂しい
でも、メンバーの幸せを一番に願っているから
それもまた応援できる。
「寂しい」
そう言う感情が湧いてるのが本当に奇跡だ
そう言える仲間ができたことが奇跡だ
地獄の中、その苦しみを共有して支え合い
共に前を向けるかけがえのない仲間に出会い
大きな目標を叶えることができた
.......中には一生に一人の最高の相手を見つけた人もいる
NCTが地獄から救ってくれた
居場所になってくれた
NCTがなければ、みんなとうに死んでいただろう
くさい話に聞こえるかもしれないが、最高に大好きで大切な仲間だ
ジョンウが涙ぐみながらそう言う
みんなはその言葉に微笑むといじらしそうに抱きしめる
みんなそれぞれ「俺もだ」と言い合い
チソンはもらい泣きをした
彼らの姿を嬉しそうに、心底幸せそうに眺めるテヨン
その隻眼の左眼からは涙が滲んでいた
突然の告白にみんな少し驚いた顔をしたが
柔らかい表情で「こちらこそ」と答えた。
「ユタ、僕らの夢叶ったね」
テヨンは誰にも聞こえないような小さなこえでそう呟くと
溜めてた涙をホロリと零した
_______________次回、最終回とエピローグ
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。