作戦後、ようやく仕事が落ち着いてきた頃
僕は久しぶりにロビーでくつろいでいる
ここで頼めるミルクティーが美味しい
ミルクと紅茶がいい塩梅で…
本を片手に2時間くらいいるんだけど、さっきからずっと気になってることがある
…ショウタロウとソンチャンがばたばた行ったり来たりしているのだ
何してるんだろうな…
とか思ってたらこっちに近づいてきた
几帳面にジップロックに入れられた灰色の衣服が渡される
少し古い印象だ
2人はぺこぺこしながら立ち去って行った
かわいいなぁ
今日は僕も休みだし大学もないし、サッと調べちゃうか
〈ソンチャンside〉
あなたヒョンと別れて廊下を歩く
優しい笑顔を浮かべるヒョン
あ〜、今日も可愛い!!!!
近場のお寿司屋さんに移動する
そういえば、タロヒョンと寿司を食べに行くの初めてだな…
いつも出前ばっかりだったから
ただの安い回転寿司でもこんな反応をしてくれるのはこの人ぐらいだろう
席に着く。
うわ、これ本格的に日本式の寿司屋だからよく分からないものいっぱいある…
この箱はなんだろ?ワサビ…じゃないみたいだけど粉末が入ってる
この取っ手みたいなのはなんだろう
押せば何か出てくるのか?
僕がどぎまぎしてると、タロヒョンが謎の粉末をコップに入れると
謎の取っ手をコップで押し付ける
お湯が出るのか…
それを僕に差し出す
大きく目を見開くとフリーズするヒョン
さっきも聞いたように、
ヒョンは記憶上では回転寿司は初めてなのだ。
"記憶上では"
さっきのお茶の入れ方、初見では訳が分からない
なのにヒョンは一切の迷いもなく、お茶を入れた
元から知っていたかのように
そう、知っているのだ。知っていたのだ。
記憶としては現れない記憶が、無意識を通じて現れたのだ
タロヒョンは過去に回転寿司に行ったことがあるという記憶が
タロヒョンはフリーズから解けると、手で顔を覆った
僕はタロヒョンの隣に座ると彼を抱きしめる
困惑と恐怖、それを堪えるようにギュッと結んだ唇
それしか言えなかった
数分後、このままにしてると
タロヒョンがこっちを向いた
そこからもぐもぐ食べ始めるヒョン
この人は意外とよく食べるのだ
寿司屋を出る頃には、僕らは笑顔だった
僕らは夕方の河川敷を歩く
変な時間にご飯食べちゃったなあ
タロヒョンが足を止めて僕を見る
こんなことを言われるとは思わなかった
冷や汗が出る
僕がヒョンを…?
僕はヒョンに抱きつく
タロヒョンが僕を抱き返す
いつもはとても強いヒョンだけど、
今日は小さく、か弱く見えた
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。