ユウタside
カタカタカタと異常に早いタイピング音だけが響く部屋
ここはテヨンの仕事場
テヨンと、その横にジョンウが淡々と仕事をこなしているのを
俺は作戦資料を読みながら横目で見る
ジョンウは資料をパタパタまとめると
各部隊へ情報伝達に出かける
通信系機器は機密性が低くなるから重要なことはテヨンから、ジョンウを通して口頭で全体に伝えられるのだ
部屋から出る前にジョンウと目が合う
ジョンウはにっこり笑うと
甲高い声で俺を呼ぶ
………可愛いやっちゃ
僕がそう返事をすると満足そうに部屋を出ていった
これは最近俺らの間で流行ってるヤツ
休みなくタイピング音が響く
…テヨン、いつ休んでるんやろ
ココ最近「ユウタは先に寝てて」と言われてばかりでこいつがちゃんと寝ている所を見ていない
今日は特に顔色も良くないし、表情も冴えない
俺と目を合わせない
…これは嘘ついてる時の仕草
テヨンは嘘つくのが下手だ
やっぱ目を見ない
テヨンはふう、と深呼吸すると
体を伸びをする
「お昼食べるかぁ」
そう呟きながら立ち上がった瞬間
テヨンの体がグラッと傾いた
反射で立ち上がり、間一髪床に倒れ込む前ギリギリで支える
テヨンは支えられた姿勢のまま動こうとしない
ほらみろ、限界なんやないか
長年の付き合い舐めんな
俺はドヨンに電話すると、テヨンをソファに寝かせる
テヨンの支持で仕事の引き継ぎをすると
テヨンを抱き上げて隣にある寝室に運ぶ
寝室では既に、ドヨンが半ギレで待機していた
機関銃みたいな小言を延々聞かされる
その通りだぞ、テヨン
その間も手は的確に動いているのが凄い
栄養剤を注射すると、全ての処置を終えたドヨンは立ち上がる
ドヨンはテヨンのおでこをペチンと叩くと仕事に戻ってしまった
俺は横で、テヨンがしていた仕事の続きをする
…許してあげよう
俺はベッドに移動すると傍に腰掛ける
閉じられた目からは長いまつ毛が花びらが咲いているみたいに生えていて
寝顔は彫刻が寝ているみたいに綺麗
目を瞑ったまま微笑むテヨン
…かわいいな
そう思いながら見てると、テヨンがとろんと眠そうな目を開けて
両腕を広げてきた
そう言われた瞬間、俺は何も考えずにテヨンの胸の中に顔を埋めていた
………………っ
これはズルいやろ………
かわいすぎる…
俺はテヨンに何か言われる前に、唇を唇で塞ぐ
こうやってテヨンとじゃれるのも久しぶりだ
本当に幸せ
テヨンの体温と、匂いを肌で感じる
…なんかこうしてると
こいつと出会った頃のことを思い出す
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。