第108話

三班:3
5,338
2021/05/14 01:42


螺旋階段を下る




この道は地下闘技場の直通の道ではない

普段はあまり使われてないようで、蜘蛛の巣が張り巡らされ雪のように降り積もった埃は壁まで張り付いていた。




迷路みたいなこの階段を迷子にならないように進む









ウィンウィン
ウィンウィン
あなた、見て


ウィンウィンヒョンが指差す方向を見る


普段はあまり使われていないと思っていた場所だが、埃がはった床に複数の足跡が見える



(なまえ)
あなた
やっぱり待ち伏せされてますか
ウィンウィン
ウィンウィン
そうみたい



階段が途切れて、真っ直ぐの道に出る。
道の先には重そうな扉が


この奥に、一体何が待ち構えているんだろうか




この地下闘技場は特殊な作りをしている

元々は政府が地下放水路として作っていた広大な地下水路だったものが
財政や諸々の問題で中止、廃案とされて地下水路跡となった







それを勝手にリメイクしたものが今の地下闘技場なのだ






なので内部構造としてはかなり開放感のある空間だ

以前にジェヒョニヒョンの密偵について行った際来たことがある


灰色に青が混ざったようなコンクリートでできた大きい体育館が縦に三つ並んだぐらいの開けた通路の真ん中に、ぽつんとリングが置かれていて
その周りを取り囲むように簡易の椅子が囲むように置かれた
他とは雰囲気が違う闘技場だった





印象としては、隠れる場所が少ない
止まってる暇はなさそうだ


歴史の授業でよく見るような、昔の戦いのように
開けた平野で戦うようなイメージが近いだろう










ウィンウィン
ウィンウィン
中にいるのは多分70人くらいかなあ
(なまえ)
あなた
うわあ、多いですね、、、


対して僕らは13人

70と言う人数はざっとした見積もりで、実際はもっといる可能性だってある


生きて帰れるかも微妙だな


ヤンヤン
ヤンヤン
ワクワクするなあ〜!!!


ヤンヤンの呑気な声になんとなく緊張が解れた








僕らは覚悟を決めると武器を構え






構成員が扉に高性能爆弾を仕掛る







ウィンウィン
ウィンウィン
やれ

ウィンウィンヒョンの声と共に扉を爆破すると僕はその間から噴煙弾を数発撃ち込む


僕らは事前に闘技場の立地のシュミレーション訓練をしていたので
目視で確認せずとも感覚で全体に散らばるように配置につく





ここからは各自の腕前が試される





弱ければ死ぬし、強ければ勝てる






ただそれだけのシンプルな世界が噴煙と共に幕を開ける










噴煙で周りがよく見えないが横から気配を感じた

思いっきって飛び込むと敵の姿が。
胸の前で抱いた銃を思いっきり相手に向けて銃弾を浴びせる



まずは一人




この場所は動きを止めたら死ぬ
僕は動ける方だが、あの化物みたいな幹部たちに比べたら全然なので周りがよく見えるようになるまで円柱の柱に影に隠れる


少しまだ緊張しているが、銃の赤子を抱いているような重さと
その柄に彫られた文字が僕をなだめる



開放的な空間の闘技場だが、等間隔に円柱の柱や階段が置かれているので僕はそれを利用して戦うこととしよう


僕は中、後衛ポジションなので後ろで全体を見ながら銃を操る





基本的には相手の銃などの飛び道具使いを倒せばいい




真ん中で近接戦闘をしているヒョンとヤンヤンを横目に僕は銃使いを捉えて引き金を引く
(なまえ)
あなた
来いよ




敵に二発ほど命中させ、遊撃を繰り返し

周りにいた敵を僕目掛けて攻撃をしてくるように誘導する





前衛で戦ってる人達からできるだけ注意を逸らしたい








僕全速力で隣の柱に飛び込むように移動する
僕の後ろにスレスレで銃弾が追いかけてくる





そしてその場所でもう一回発砲

それを繰り返す






遠距離の敵ばかりではない




僕の後ろから二人、体術使いが襲いかかってくる

僕はそれを避けながら短剣を取り出し切り込む隙を窺う。
この時、遠距離組みに捕捉されていることを忘れてはならない




大振りの突きを避けるとその手を受け流すように掴むと
敵の体の中に素早く入り込み

相手の体重とスピードを相乗して床に叩きつける







その陰からのもう一人の攻撃を避ける

こいつは少しめんどくさそう...


僕は短剣を入れ替えるフリをして胸元に忍ばせておいた拳銃を取り出しそのままの流れで発砲する






少しずるいかもしれないけど勝てれば問題ない















《ウィンウィンside》






敵の数は77

うん、概ね予想通りだ




遠距離を警戒していたけどあなたが上手いこと注意を引いて処理してくれているみたい

これならこっちもやり易い
さっきの体術も綺麗に決まっていたし



あなたの体術は僕とクンヒョンのハイブリットだ

僕とあなたは体格が似ているから、彼もやりやすそうだった
まあ僕のようにはもちろんできないからクンヒョンに何個か技を教えてもらって今の彼の形になっている



上手くなったね、あなた












さあ、僕も仕事をしますか






襲いかかってくる敵を最小限の動きで避ける

体力温存





僕にはテンヒョンやユタヒョンみたいな反射神経も動体視力もないし
ルーカスみたいに力が強いわけでも体力があるわけでもない




でもね




体のしなやかさなら誰にも負けない






全身の力を抜いて。感覚を研ぎ澄ます



相手の攻撃の風圧を使って避けるイメージ
蝶のように、風にはためく布みたいに。







相手の力を利用して






攻撃後の敵の体制は少しどこかに体重が偏ってる


それを冷静に見極めて少しとんと押してあげたり
方向をコンと変えてあげるだけで

簡単に人を空中で回転させることができる










そして相手は自分の力で倒れる






相手が強いほど、僕は強くなる





さて、僕は行けそうだけど

この立地。あの子が心配かな










《ヤンヤンside》




いつもみたいに敵を殴っていく


今はさっきみたいに静かにやらなくていい
思いっきり棍を振り抜く









振り抜いた先に気持ちいい手応えを感じるごとに快感はあるものの





今は何だかノれない






僕この場所嫌いだ、、、

周りには障害物もないような空間、あるのは壁沿いに沿って円柱があるだけで
空中で方向転換できるようなものがないから攻撃の幅が制限されるし




この床が棍の素材と合わずにツルツル滑りそう



開けた空間だと間合いも詰められ易い





ヤンヤン
ヤンヤン
やりにくいなあ!!!むかつく、、




僕は苛立ちのままに棍を振り抜き
それに任せてスピードを上げる



それで十分雑魚は余裕で倒せるけど、さっきから妙に体躯のいい野郎が数人、僕の攻撃を避けていく

ものすっごい腹立たしい






くっそ....




僕はそう呟いて空中に高く飛び上がりその動きに驚いているそいつらを一蹴する





同時に3人も振り抜いたせいか、相手が思ったよりも固かったせいか






僕は空中でバランスを崩してしまった










ヤンヤン
ヤンヤン
った....




高い場所から肩から落ちる




なんとか起き上がって追撃を避けるが

肩を動かすたびに激痛が走る。





痛い





自分の予期しない痛みがこんなに嫌なものだったなんて忘れてた










一人の男に追いつかれ思い切り顔に拳を入れられる

なんとか手で庇ったが僕は吹き飛ばされて
受け身もままならないまま地面に叩きつけられる




(なまえ)
あなた
ヤンヤン!


あなたヒョンが遠くの柱から飛び出してきて
僕を殴った男と数人を撃つ



敵は後14人


対して僕らはもう僕とあなたヒョンとウィンウィンヒョンしか残ってない







あなたヒョンが2人、3人と倒していくが
近接戦闘の構成員に阻まれギリギリの苦戦を強いられている




1人の男が僕にナイフを振り下ろす



のをあなたヒョンがその男を撃って阻止するが

ヒョンは自分が攻撃されている途中にそれをしたため
自分の防御を犠牲にしてしまった






モロに攻撃をくらって壁際に吹き飛ばされるヒョン


一瞬意識が飛んだみたいだがなんとか持ち直して懐に忍ばせておいた拳銃で敵を撃った





あなたヒョンは周りの敵を全部倒すことができたが、相討ちみたいな形になってしまったのだろうか
壁に背中を預けたまま動かない






ヤンヤン
ヤンヤン
ヒョンっ!!!
ヤンヤン
ヤンヤン
いった.....い..




怒りと苛立ちに飲まれて感情と人格が入り乱れて


いつもは笑っていられる程度の痛みがひどく痛く感じる






ああもう、ほら


敵が束になって僕に襲いかかってくる

ああほんとに最悪。全然見切れるしカウンターもできそうな攻撃なのに















体が動かない
















死ぬ














そう思った瞬間


















僕に降りかかろうとしてきた敵が




動きを止めた





ヤンヤン
ヤンヤン
ウィンウィンヒョン...っ!






ヒョンが流れるような、風みたいな動きで全員のうなじを切り裂いていた







でも、名前を読んで僕は思わず口を紡いでしまった


















いつもはふわふわしてて可愛いウィンウィンヒョンが


今まで見た事もない、本当に怖い顔をしていたから









ウィンウィン
ウィンウィン
僕の弟達に触んじゃねえよ






低い声





僕でさえ怖気付いてしまうような冷たい瞳で
血飛沫をあげながら倒れる敵を見下ろしている










しばらく見つめていると、ふっとその瞳から殺意が消えた





いつもの表情のヒョンに戻る









そしてヒョンは僕を優しく抱きしめる

ウィンウィン
ウィンウィン
ごめんね、痛かったよね
ヤンヤン
ヤンヤン
ち、違いますよ
僕がヘマしでかしただけです、、、痛っ、
ウィンウィン
ウィンウィン
脱臼だね、動かさないほうがいい
ヤンヤン
ヤンヤン
それより、あなたヒョンが、、




ウィンウィンヒョンはサラッと僕を抱き上げると
あなたヒョンのところへ向かう







あなたヒョンは壁にもたれながらお腹を抑えてる

ウィンウィン
ウィンウィン
あなた、大丈夫?
(なまえ)
あなた
う〜...痛かったぁ...
ウィンウィン
ウィンウィン
上手く受け身が取れたんだね。よかった、、、


ヒョンはそう言ってしゃがみ込むとあなたヒョンの頭を撫でる





あなたヒョンはウィンウィンヒョンの肩に手をかけて
体を支えられながら照れ臭そうに立ち上がる

(なまえ)
あなた
まあ、いつもクンヒョンの食らってるんで...
(なまえ)
あなた
ああっ、ヤンヤン大丈夫?
ごめんね間に合わなかった...
ヤンヤン
ヤンヤン
いやだからぁあ、僕がミスっただけなんですよお本当にすいませんまじで心配しないでください...


このヒョン達はなんなんだ

こんなに心配されてしまっては調子が狂うじゃないか






僕はそのままヒョンに抱っこされる形で地下街を後にする




























いつもは可愛くてホワホワしてるウィンウィンヒョンの腕の中は














その線の細さとは想像つかないくらいびっくりするくらいしっかりしていて





なんだかいい匂いがして










とても暖かかった

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