《ソンチャンside》
今日は少し寒いな
もう四月も終わるのに
そろそろ来るかな...
そう、四班のメンバーはヒョンと僕の2人のみ
他の班は幹部以外にも構成員を連れていたりするみたいだけど僕らは2人だけ
僕らの作戦場所は
この貧民街
死んだような、高くも低くもないボロアパートが立ち並び
多くの建物には蔦と下手くそな落書きと
もう読めもしなさそうな雨風にさらされたチラシがまとわりついている
道は狭く、いやこれは道とは呼べないな
路地のような道には
吸い殻や空き缶、注射器が転がっている
この街は僕とヒョンが出会った所
ヒョンは微笑むと夜の街を見下ろす
都会とは対照的に、この街の夜は暗い
少し先を行けばドヤ街みたいな場所があって
そこはネオンやらなんやらで眩しいけど
冷たく吹き付ける風がなんだか昔を思い出す
僕らがいなくなってからこの街は少し変わってしまったみたいだ
なんだろう、雰囲気が違う
昔はもっと野良のチンピラがここら辺を徘徊して
毎晩喧嘩が盛んに行われていて。
治安は全然良くなかったけどみんな自由に荒れる者は荒れて好きに生きていた感じだったのに
今はそうじゃない
人通りもあまりなく、通ったとしても
みんな何かに追われているみたいに怯えた目線を走らせながら背を丸めて通り過ぎてしまうのだ
そう、僕らがこの町で暴れ回っていた頃は
この街は実質”僕らのもの”だった
治安は悪かったものの、賭け麻雀や闇酒 と言ったような法にぎり触れるか触れないかあたりのギリギリのことが行われていただけで
強面の人たちも実は優しかったりとなんとなく暖かい場所だった
でもこれはこの場所が周囲からは僕たちの”縄張り”
として認識されていて手を出されなかっただけで
僕たちがいなくなってからはその場所にアヴィリオが漬け込んで今じゃ麻薬や臓器売買などの犯罪が横行する嫌な街になってしまった
今回の僕らの目的はそのアヴィリオを掃討する事
長らくここに住んでいてこの場所で戦うことに関しては僕らが一番この掃討作戦に適しているのは誰もが見てもわかるだろう
僕らは暗くて狭い路地を走る
今こそやらないけど昔はこうやって物を盗んでは2人で逃げたりしたなあ
そうやって懐かしんでいると
僕らの目の前に数人の男が立ちはだかった
⚫️「お前らは...前ここを縄張りにしていたショウタロウ?とソンチャン、か...?」
⚪️「お前らは今NCTにいるらしいな」
⚫️「それなのにのこのこと俺たちの巣に飛び込んでくるなんざいい度胸だな」
⚪️「今お前らを殺して死体をボスに見せたらヨォ俺たちは大金持ちになれるって訳」
⚫️「さあ、大人しく死んでくれや」
男は口々にそう言いながら集まって
男の1人がタロヒョンに鋭く拳を放つ
ヒョンはそれを軽々と受け流して逆にカウンターとして目にも止まらぬ速さで相手の腹に拳を叩き込む
呻きながら倒れる男をいつものようにニコニコした顔で見下ろすと彼は口を開く
その言葉をトリガーに相手が僕らに迫ってくる
その無数の攻撃を躱す
この状況が、なんだか楽しい
そういうと僕らは逆方向に分かれていく
こうやってみると本当にヒョンと生活していたあの頃を思い出す
汚くて、毎晩悲鳴が聞こえるようなこの街で
ゴロつきと喧嘩して金を奪ったり、盗みを働いたりと
決して胸を張ることができないような生き方をしてきた
怪我は絶えないし、いろんなところから恨みを買った
でも
そんな中、安い酒場でいかついおじちゃんに酒を奢ってもらって2人で酔っ払ったり
札が大量に入った財布を盗んだような日には2人でデパートで豪遊しておいしい物を食べたりしたような日々は
僕らにとって本当に楽しくて大切な思い出だ
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。