第105話

二班:2
5,188
2021/04/27 15:17



《ルーカスside》






こんなところに来ても、あなたのことが頭に浮かんでくる


俺はあの時、最悪なことをしてしまった



あなたの痛みと苦しみにもっと寄り添ってあげるべきだったのに
余計苦しめてしまったかもしれない

あなたが生きるのを諦めてしまいそうで怖くなって
約束したはずなのにまた自分を痛めつけていたのに悲しくなって
俺の気持ちにいつまでたっても気づかない姿に腹が立って





無理矢理唇を奪ってしまった





俺の足元で苦しそうに肩で息をする姿が頭から離れない






頬を伝う涙を、拭ってやればよかった

いや、俺にそんな資格は無いのかもしれない










やめろ、考えたってキリがない

集中しろ












ヘンドリーの指示を聞いて、相手の気配を感じて





ここって場所に、最大の力を込めて打ち込む


そのポイントがなんで分かるかはよく分からないけど、とにかくピンとくるものがあるんだ





俺は基本的に戦いは頭を使わない
考える事は嫌いだ。余計反応に遅れちゃう


本能が囁くままに、体が動きたいという方向に






自分を信じて






目の前から敵が飛び出し、小銃を乱射してくる

避けるべき、だけど俺の体は前に進みたいって言ってる


「弾は当たらない」


体がそう囁く







俺は疑う事なく、体を思いっきり前に走らせる

こういうときのポイントは至って単純






躊躇せず、怖がらないこと






それだけ










はは、本当だ

こっちを向いているはずの銃口なのに
銃弾は綺麗に俺の体すれすれに球を飛んで行く。

まるで弾が避けてくれるみたいに





そのまま銃を打っていた敵をぶん殴る










「ルーカス、背後のコンテナの左右に3人!!!」



ヘンドリーの声






俺は近い方にいたガタイのいい構成員に殴りかかる





と、向こうも手練みたい
俺の一撃を受け止めた


そして短剣を鋭く振りかざしてくる

速い

全然目で追えていなかったが、勝手に体が動いて避けた




意志を限りなく深く落とし込む

戦いにおいては俺の中にいる俺の方が上手だから


意識と無意識の狭間

俺は本能のままに攻撃を避けて攻撃を打ち込む






男を倒すと反対側にいた二人を捕捉する





彼らは銃を連射してくるが




今俺、すっごい集中してるみたい

銃の軌道がはっきり見える
一つ一つを肉眼で確認して避けれそう

相手の動きがスローモーションに見える
表情や、次の動きへの予備動作まで鮮明に。







狙うべき隙が、はっきりと分かった





俺はそこに、吸い込まれるように蹴りを打ち込んだ














ルーカス
ルーカス
!?


勝手に体がしゃがみ込んだ


驚いて後ろを見ると、一人の敵がナイフを振りかざした後だった

もしかして、俺、何も見ずに避けた???






驚いて集中が切れてしまった。

はっと我に帰ると敵が二人、銃を構えて引き金を引く所だった






しまった....!







避けられない、そう思った瞬間

その敵がほぼ同時ぐらいに頭から血を吹いた


ルーカス
ルーカス
シャオジュン!!!!
シャオジュン
シャオジュン
ボーッとすんなあ!あぶねーぞ!!!
ルーカス
ルーカス
nice!!!!!



シャオジュンが鉄塔の上から何かを叫んでるけど

風が強くて全然聞こえないので適当に返事をする








俺は体制を立て直すとまた敵に向かって突進する



















《シャオジュンside》





夜風が気持ちいい



ただの電灯のように見えるが光度が調節されているみたいで
おかげですごい見渡しやすい


ヘンドリーと連携をとって丁寧に一人一人撃ち抜いていく






銃は打った時にフラッシュのような光が出る

僕のやつはそれを抑える加工をしているから大丈夫だけど

ここから見たら線香花火みたいにチラチラと飛び散る光が見えるからそれを手がかりに標準を合わせる


撃つ度に出てくる銃の反動を全身を使っていなす
反動に逆らおうとしちゃダメ。かないっこないんだから



なんで自分が狙撃が得意なのかはよく分からない
むしろ最初に見たときなんかは苦手そうだなって思ったぐらいなのに

ただ自分に反動を受け止めるセンスがあったのと




このズッシリとした質量と冷たい金属管が俺の心を高揚させると同時に
嫌なことを考えないようにさせてくれた






手指の震えはピタりと止まり




標準を合わせる手は思い通りに動いて




レンズ越しに覗く世界と頭の中は限りなくクリアで




風、距離、角度を全て計算に入れた軌道が真っ直ぐに見える









引き金を引く手つきは、まるで愛しい人の頭を撫でる時のように
穏やかで優しい
















仲間たちの周りから少しでも危険を遠ざけたい

その一心で引き金を引き続ける













気付いたら敵はもう残りわずか





あと3人いるはずなんだけどもう一人が見当たらない



















ヘンドリー
ヘンドリー
シャオジュン横!!!!!!




その声にはっと気づき横を振り返ると

遠くの丘から光がぽっと見えた








シャオジュン
シャオジュン
.....!!!









撃たれた











この場所はどこからでも見渡せる場所


つまり裏を返せば



向こうからもここが見通せるということ






シャオジュン
シャオジュン
ってえな....!




俺はさっき光った方向に銃口を向けると

撃つ




悲鳴が聞こえた











人間の、自分に危機が迫った時の集中力は恐ろしく
なぜか僕はこのとんでもない距離を

スコープも標準も使わず、明かりもないまま



光った場所の手がかりと手先だけを頼りに撃ち抜いたのだ








血がぼたぼた流れる






当たった場所は立て膝をついていた足の太腿で
幸い急所でもなく、何の筋も切れていなさそうだった
すぐに治るだろうし立てないほどでもない







普通に痛い




ヘンドリー
ヘンドリー
大丈夫かよ!!!!!おい!!




敵は全て倒したようで、ヘンドリーとルーカスがこっちに上がってくる





立ち上がろうと力を入れた瞬間
激痛が走る



シャオジュン
シャオジュン
痛っ
ヘンドリー
ヘンドリー
痛むよな、ごめん、もっとあっちに気を使っていれば...
シャオジュン
シャオジュン
違う、、お前は悪くないって




血が大袈裟に出てくる


止まってくれよ、そんなに出ることないじゃないか
ヘンドリーが余計心配するだろうが



せっかく作戦は成功したんだし、
ヘンドリーもルーカスもいろんなところ怪我してんだから
気にしないでよ...







ヘンドリーが俺をヒョイと持ち上げると階段を駆け下りる



シャオジュン
シャオジュン
ちょ!!!やめろ恥ずかしい!一人で降りれるからっ...
ヘンドリー
ヘンドリー
痛いって思ってるのバレバレなの!!
大人しくしてろ!
ルーカス
ルーカス
ヘンドリー大丈夫?俺が持とうか?
ヘンドリー
ヘンドリー
嫌だねお前はあなたでも運んどけや!!!





そのままヘンドリーは車に俺を放り込むと

ルーカスが車を急発進させる






ヘンドリーに応急手当てをしてもらっていると
背後から白い光が走った



振り返るとユタヒョンたちがいた場所から大きく火の手が上がっている





ヘンドリー
ヘンドリー
ウッっっっわまじかよ信じられないぐらい派手にやってるじゃねえか!!!!
ルーカス
ルーカス
これやばくない???
ヘンドリー
ヘンドリー
ひえ〜〜〜どんだけ恐ろしい爆弾もてたんだよあいつら...
ヘンドリー
ヘンドリー
ひゃあああああ、爆音がうるさい耳痛いよおお
シャオジュン
シャオジュン
ひいいい足痛いよおおおお
ルーカス
ルーカス
ああああああお前らがうるさすぎて俺の耳があああ
ヘンドリー
ヘンドリー
うわ今の声でもっと耳痛いんだけど
お前声でかいんだよ!!!
シャオジュン
シャオジュン
やめてマジで騒がないで音が傷に響くから!!!















結局、アジトにつくまで車内はうるさいままだった

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